大阪城公園よろず相談

大阪城公園を中心に野宿者支援活動を続けている大阪城公園よろず相談のブログです。

第32回「センターの日」のお知らせ

「センターの日」

 強い雨が降り続いています。例年ならもうかき氷が楽しめる時期なのですが、今年はどうなるのでしょう。

 呼びかける前から「今日は映画観るんやろ?」と来てくれる人もいます。このような日がいつまで続くのでしょうか。

場所・日時のご案内

 JR新今宮駅西口から地上に出て、国道の向かいのあいりん総合センター正面付近で、2020年7月18日(土)13時から16時に実施します(基本的に毎月第三土曜日)。

これまでの「センターの日」

 これまでの報告はこちらです (第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回 第21回 第22回 第23回 第24回(中止) 第24回 第25回 第26回 第27回 第28回 第29回 第30回 第31回)。

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カンパのお願い

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2020年6月20日(土)第31回「センターの日」——二つの都市のコモンズ

第31回「センターの日」のあらまし

「センターの日」はどこでやるの?

 2020年6月20日(土)で「センターの日」は31回を数えました。前日にセンター周辺に告知のポスターを貼っていると「「センターの日」やな。いつやったかな」などと声をかけていただけるのが当たり前のようになってきて、不思議な気持ちになります。そのほか、ポスターを貼っていると「なんかええこと書いとるか?(笑)」と物見高い目線で話しかけられることもあります。「どこでやるんや」と訊かれて、そういえば場所を書いていなかったことに今さらながら気づかされました。

 センターの中でやっていたころは、どこでやるかなど、そもそも問題にもなりませんでした。でも、よく考えると、前日に告知ポスターを貼るようになったのはわりと最近のことです。当日お配りしているビラのほかにポスターを貼りはじめたのも、そういえばセンターが閉鎖されてからでした。

 「センターの日」はとにかく私たちがセンターに入れてもらって、みなさんに立ち寄ってもらって、センターのことを知ろう、教えてもらおうという考えで始めたものです。毎月第三土曜日の開催というのも「月の真ん中(センター)にやろう」というセンターづくしの日にしたかったからです。

 センター閉鎖後の「センターの日」は、センター北西部、南海電鉄側の北側にある「団結小屋」の横のスペースを借りてやっています。

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三ヶ月ぶりに復活のバーベキューコンロ

 この日は、団結小屋の人が通りすがりの人からカンパでいただいたというみりん干しをさらにカンパしていただいたので、三月の「センターの日」まで毎月登場していたバーベキューコンロを取り出して、炭火焼きにしていただきました。10匹ほどもあった大きなみりん干しは、焼いている先から集まっていた人たちに食べていただきました。

 まだまだ炭が余っていたので、ウィンナーやさつまいもも買ってきて焼きました。東京の山谷で長いこと暮らしていたという人が炭火焼きを仕切って下さったのでとても助かりました。この日はさらに鶏むね肉を買ってきてもらえたので、そぎ切りにしたものを塩コショウで焼いて食べました。さらに「参加費や!」と言って牛肉を買ってきてくれる人がいたり、最後には凍ったホルモンのかたまりまで加わって、美味しい匂いが充満していました。

 昨年の6月といえばもう結構暑かったし、かき氷をやっていたのですが、今年は炭火焼きバーベキューもまだ楽しめました。7月の「センターの日」からはまたかき氷が楽しめるでしょうか。

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映画「少林寺

 映画はジェット・リーリー・リンチェイ)主演のカンフー映画少林寺」(1982年)を観ました。最近もカンフーものの映画は作られていますが「少林サッカー」(これももう古い?)のように、ちょっとネタ的にひねったものになっています。この「少林寺」は歴史的な設定を背景に、カンフー・アクションの王道という感じで、観ているだけでワクワクしてきました。

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散髪の季節到来

 事前のリクエストもあったので、15時頃から散髪をはじめたところ、自分もして欲しいと次々と希望者が現れました。

 映画、かき氷、バーベキューコンロ(七輪)と並ぶ「センターの日」の人気コンテンツ、素人散髪の季節が到来したようです。恐れを知らぬ人はぜひお越し下さい。

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最近の出来事から

特別定額給付金の要望について

 特別定額給付金については有志の団体で引き続き、6月30日には総務省に、7月6日には大阪市に対して要望を提出し、協議の場を持ちました。国も大阪市も、呆れるくらい強固に建前でやり過ごそうとしています。大阪市長は「自立支援センターに住民票を置いて下さい」と記者会見の場で言ったにもかかわらず、自立支援センターを管轄する窓口は「自立支援センターは住民票を置く場所ではありません」などと、正反対のことを言い出すという無茶苦茶な状況です。シェルターに住民票を置けるか置けないかといった話になっています。

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二つの都市のコモンズ

 1年半くらい前に「都市のコモンズ」について書きました。近年注目されてきているこの言葉をめぐって、二つの立場があります。

 一つは「まちづくり」です。「コモンズ」とは、もともと「共有地」とその管理の仕組みを意味する言葉であり、都市においては住民自治の仕組みとして活かしていこうというスタンスです。アメリカでは、指定された地域の不動産所有者から活動費を強制徴収する代わりに、それを財源に地域改善活動を行う住民組織を結成するビジネス改善地区(Business Improvement District)があります。2014年に大阪市では、大阪市エリアマネジメント活動促進条例というものが作られ、これは日本型BIDと言われています。大阪市のこの条例では、活動費を徴収する代わりに、公有地の占拠を許し、収益事業を可能にするものとなっています。よく似たものに2015年からはじまった大阪城パークマネジメント事業があります。これらは言ってみれば「上から作り出された都市のコモンズ」と言えるでしょう。

 それに対して「草の根で作り出された都市のコモンズ」もあるはずです。これは、ふだん当たり前のように私たちが行っていることなので、なかなかその存在に気づかれることがありません。コモンズなどという言葉に注目が集まる以前から、私たちが作ってきた、もう一つの「都市のコモンズ」がこれにあたります。

 コモンズとは単に場所のことではなく、その場所を利用する人たちが作り出すエネルギーそのものです。「今日は「センターの日」やろ?」と誰かがやってきて、映画や炭火焼き、コーヒーなどの取り組みもあるものの、必ずしも知り合い同士でもない人たちが集まって、月一回何だか盛り上がって終わる「センターの日」も、一つのエネルギーの発散だと思います。

 もちろん、「センターの日」の前に、そもそもセンターがエネルギーが集まる場所でした。センターに集まるエネルギーがセンターをセンターたらしめていました。センターが閉鎖されても、まだこの街にはその力が存在するし、その場所であり続けています。

 新型コロナウイルスは、人が集まれない社会を作り、集まらなくても済む仕組みを作り出そうとしています。人を集めるということはお金を儲ける手段としてもてはやされてきました。もう一方で、お金のない、行き場のない人間の場所は限られているために、特定の場所に偏って集まりが生じることともなっていました。集まるということと集まる場所とは、不思議なことに、全く立場の異なる人たちの間で、大きな関心事となっているわけです。どうすればこのことを多くの人にわかってもらえるのでしょうか。それはまちがいなく私たちの手のなかにあり、私たちの生き方に織り込まれているはずなのです。

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第31回「センターの日」のお知らせ

梅雨の「センターの日」

 梅雨まっただ中の「センターの日」となります。前回も雨でしたが、今月はどうなるでしょうか。雨なら雨で、ゆったりとテントの下で過ごしたいと思います。

場所・日時のご案内

 JR新今宮駅西口から地上に出て、国道の向かいのあいりん総合センター正面付近で、2020年6月20日(土)13時から16時に実施します(基本的に毎月第三土曜日)。

これまでの「センターの日」

 これまでの報告はこちらです (第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回 第21回 第22回 第23回 第24回(中止) 第24回 第25回 第26回 第27回 第28回 第29回 第30回)。

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2020年5月16日(土)第30回「センターの日」——西成労働センターは戻ってこない?

2020年5月16日(土)第30回「センターの日」のあらまし

 珍しく雨模様での「センターの日」になりました。12時から準備をしていると、「今日は「センターの日」やろ?」と早くも顔を出してくれる人がいました。

 雨が止みそうもないので、団結小屋の表のブルーシートを外させてもらって、テントの下でコーヒーを飲みながらテレビドキュメンタリーを観ました。

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「ヤジと民主主義」

 今回は北海道放送で4月26日に放送された「ヤジと民主主義」というドキュメンタリーを観ました。2019年の参議院選挙の際、応援演説に訪れた安倍晋三にヤジを飛ばした人たちが警察に取り囲まれ、執拗につきまとわれた事件がありました。

 ヤジを飛ばすでもなく、プラカードを持っているだけの人たちも、警察に取り囲まれ、演説に近づけないようにようにされていました。

 この時、警察に嫌がらせをされた人が「センターの日」に足を運んでくれたことがあります。いろんなおかしなことがあってもぶつけることができない、警察に不当な扱いを受ける、釜ヶ崎の労働者が日々経験していることだと思います。

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「野宿者および不安定居住者に対する特別定額給付金についての要望」

 前回お知らせしたように、住民登録ができない人にも特別定額給付金を直接現金給付するように大阪市に要望書を出し、6月8日(月)に団体協議の場を持ちました。

 5月18日(月)に受け取った要望への回答書では、「大阪市は国の方針にしたがって支給するだけ」「住民登録をしないと支給しない」「現金でわたすことはない」と、単に総務省が示した大雑把な指針を述べるだけの内容で、要望に対する「回答」とはとても言えないものでした。団体協議の場でも、基本的には同じことを繰り返すだけのバカにした対応でした。

 団体協議の日に先立つ6月4日(木)に大阪市長が市長会見で、突然「ホームレスの人たちに対する特別定額給付金の支給」について発表する一幕があり、口座を持っていない人には現金で渡すこと、ホームレスの人は自立支援センターに入所して住民登録をしてもらうという方針を述べていました。

 DV被害者については、確認書があれば、住民登録の住所にかかわらず、本人への支給が可能であることが示されています。また、無戸籍者に対しても支給は可能であり、そのために取るべき手続きも総務省により示されています。

 DV被害者の場合、現在地以前に住民登録そのものはなされていたことを根拠に、大阪市住民基本台帳が支給の条件であるような説明を繰り返していました。しかし、これらの取り扱いの指示は、住民基本台帳が最大公約数としての対象者把握の出発点にすぎず、そこから外れるケースについてはそれぞれ配慮すべきであることを証明するものです。これをあくまで「住民基本台帳に登録するための配慮」であるというなら、野宿者に対してもその事情に即した「配慮」をする必要があります。「配慮」を「しない理由」はどこにもありません。

 自立支援センターの定員を問うと答えられず、福祉局自立支援課ホームレス自立支援グループに確認に行かせると定員112名、現在の入所者56名ということがわかりました。2019年1月の全国調査で大阪市のホームレスは1,002人という結果が出ており、現在の自立支援センターに入所し、住民登録をする形では、大半の野宿者は定額給付金を受け取れないことになります。このことからも、大阪市はまともな検討すらしていないことがわかりました。

 DV被害者の扱いに準じた現在地での給付を野宿者に対しても適用できないか、という1点に関して総務省に対して問い合わせの上、次回の協議で回答することを約束させました。

 また、こちらの求めた自立支援課、住民情報グループの協議の出席は、新たな要望書を出してもらわないとできないと譲らなかったため、新たな要望書を6月11日(木)に提出しました。

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西成労働福祉センターは新しいセンターに戻ってこない?

 かまやん「え〜 戻ってくるんかい! 知らんかったぁ」「何度もそう書いてあんねんけど」というポスターがセンター内やセンター周辺に貼られていたのを覚えていますか? あいりん職安も西成労働福祉センターも、センターの元の敷地に市営住宅を加えたところに新しくなって戻ってくる、そのように説明されていました。どうやらこの話は怪しくなってきました。

 まず、あいりん職安は、もともとアブレ手当の給付くらいしかやっていません。国の政策として白手帳を無くそうという動きがある現在、そのまま戻ってきたとしてもあいりん職安は縮小され、いずれ無くされてしまうかもしれません。そうならないために、職安の機能を強化させたいという考えが、労働施設検討会議の参加者の一部の念頭にあるようです。

 次に西成労働福祉センターです。センターの職業紹介の核となるのは西成労働福祉センターの方で、技能講習や労災など、労働者を支えるために組み立てられています。どうやら、こういった西成労働福祉センターの機能をバラバラにしてしまおうという動きが、労働施設検討会議で明かされないままに進行しているようです。

 現在の西成労働福祉センターは大阪府が100%出資する外郭団体であり、そのような資金配分は公的資金の使い方として望ましくないという意見が出ているとのことです。そこで、職業紹介、技能講習、労災担当など、現在の西成労働福祉センターの窓口の機能ごとに、委託業者を競争入札する形に変えられようとしているそうです。

 そんなことになれば、窓口を横断して対応するような融通は効かなくなります。また、ある窓口は入札後も継続されたとしても、別の窓口はまったく別の業者が委託するというようなことが起きてしまえば、これまで西成労働福祉センターが蓄積してきた知識やノウハウは失われてしまうでしょう。釜ヶ崎のことなどろくに知らない業者が形ばかりの業務を「安く」こなすだけになってしまいます。

 センターは「パワーアップして戻ってくる」などと説明されてきましたが、現在までのセンターの職業紹介を担う部分がまったく別物になってしまう以上「パワーダウンするし、実質戻ってもこない」ことになるのは確実です。

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主役はどこにいる?

 あいりん地域まちづくり会議には、テーブルの上に出されていないことがたくさんあるようです。労働施設検討会議を見ていても、それまでの会議では聞いたこともないようなことを、毎回のように行政が出してきます。会議室の外にいる圧倒的な大多数がものを言わなければ、話し合いなどいくらでもごまかしがきいてしまいます。

 「何か言いたければ話し合いの場に参加しろ」とは正論のように聞こえますが、正論がねじ曲げられているのだから、まず「おかしいやろ!」という人間が本当の主役にならなければ、話し合いなどはじまらないのではないでしょうか。

2020年6月11日(木)特別定額給付金に関する追加の要望書を提出しました

どこにあるかわからない相談窓口、なかなか現れない担当者

 特別定額給付金に関する追加の要望書を提出してきました。定額給付金担当の窓口がどこにあるのかは非公開であるため、総務担当から定額給付金担当の中谷係長を呼んでいただく形になりました。中谷さんが現れたのは30分経ってからでした。

 前回の協議で、大阪市は「要望に書かれていないことには答えられない」「要望に関係のない担当を呼ぶことはできない」といって、説明責任をごまかし続けました。今回の要望書は態度を変えない大阪市に合わせて、不本意ながら提出するようなものです。

特別定額給付金は水際作戦!?

 大阪市定額給付金担当の電話は06-6263-0568ですが、これまで1度もつながった試しがなく、いつも総務担当に伝言を預けて、先方からかけ直してもらう形でしか連絡がつきません。

 特別定額給付金の支給について野宿者に情報提供するために、6月から6,000枚のチラシを配布しはじめたと6月8日(月)の協議で聞いています。このチラシに記載されている相談窓口の電話番号は、0570ではじまるナビダイヤルのものです。試しにかけてみたところ、「電話が混み合っているため、順番におつなぎします」「なお、2分経ったら自動的に切断されます」と、自動音声の応答が流れました。もちろん通話料は発信者持ちです。窓口は公開されていないので直接相談に行くこともできないし、電話もつながらないとなれば、こんなチラシを配っても何の意味もありません。

 またこのチラシには「令和2年4月27日現在で、住民基本台帳に記録されている方が給付の対象となります」と大きく書かれており、すでに手遅れであるかのような印象を与えるものになっています。

要望に対しても水際作戦

 ずっとやりとりをしている定額給付金担当の係長が現れてからも、なかなか話が進みません。「新しく要望書を出してもらわないと対応できない」「継続協議の日程は今週中に連絡する」との約束があるにもかかわらず、「6月、7月は協議のための部屋が取れない」といって、その場で日程について回答しようとしません。

 こちらで事前に問い合わせ、7月6日は同じ会議室が空いていると確認した旨を告げると、一転して「7月6日にできるかどうか調整しているところだった」と言いはじめました。しかし、6月8日に協議をして、次の協議がほとんど1ヶ月後というのでは、協議を繰り返しているうちに特別定額給付金の給付期限である8月25日を超えてしまいます。

 「部屋がない」「協議の参加人数を15人に減らしてくれればいつでもできる」などといって、日程を先延ばししようとします。野外でも構わないし、教職員組合は市役所の屋上で話し合いの場を持った事実を示しても、「野外ではできない」「部屋がない」と繰り返していました。

 代替手段をこちらから提示しているにもかかわらず、「部屋がない」などといって協議を先延ばしにして給付期限を超えてしまえば、それは大阪市の手続き上の過失になります。その場合、大阪市として責任を持って給付を実施するのかと問いましたが、「それはわからない」といって、明確な答えはありませんでした。

大阪市が要望に対して果たすべき責任

 今回の要望書では、定額給付金担当に加え、住民情報担当、福祉局自立支援課ホームレス自立支援グループも参加の上、要望に応える責任を負うことを求めています。

 そのほか、次の二点を改めて整理して盛り込みました。

  1. 総務省に対し、住民基本台帳への登録にこだわらない特別定額給付金の支給の道筋を求めること
  2. それが難しい場合、定まった住所を持てない者に対し、住民基本台帳への登録を可能にする代替手段を現場の運用によって実質的に確保すること

 これまで大阪市がやったのは、総務省に見解を確認しただけで、われわれの要望に応えるための具体的な行動は何も取っていません。話し合う前にやっておくべきことをやっていないのだから、前回の協議は協議の体裁をなしていなかったことになります。とはいえ、一点目にかんしては、相手がいることなので、何日までにと迫られても、必ずしもすぐに答えが出せない場合もあるでしょう。

 しかし、二点目については、大阪市単体の責任で行わなければならないことです。さらには、大阪市の方から「自立支援センターに入所して住民登録して下さい」と言いだしたことです。これは6月4日の大阪市長自身が市長会見で述べたことでもあります。ネットカフェや簡易宿所なども住民登録を可能とすべきという見解が総務省からも示されていますが、宿泊費が捻出できるなら野宿などしていないし、現金収入が断たれてそれらの施設を利用できなくなった人たちまでいるのが現実です。

 その自立支援センターの運用実態についても、先日の協議の際、担当者はまったく把握できていませんでした。2019年1月の概数調査によれば、大阪市のホームレス数は1,002人となっています。それに対し、自立支援センターの定員は112名、現在の入所者は56名とのことで、自立支援センターに入所して住民登録が可能なのは、1,002人のうち6%未満にしかなりません。

 住民登録の有無を支給条件としないことを求めるわれわれの要望に対し、「住民登録しなければ特別定額給付金の支給対象にはならない」という姿勢を崩さず、それが難しいから要望に来ていることを承知で「住民登録さえしていただければ特別定額給付金を支給する」と言っていました。

 そして、「住民登録したければ自立支援センターに入ればいい」と後から付け加えました。多くの野宿者にとって、自立支援センターに入所しても自活できるような安定した仕事を見つけるのは難しく、せっかく築いた野宿生活でも食べていける基盤を捨てるリスクの方が大きいのが実際です。

 そのようなジレンマを抱えざるをえない自立支援センターを、野宿者が住民登録するための唯一の選択肢のように提示しておきながら、全体の数%しか利用できないとはどういうことでしょうか。大阪市自ら言い出したことである以上、特別定額給付金の申請と受け入れに十分間に合う期間内に、1,000人でも2,000人でも自立支援センターに入所できる体制を整える責任があります。

 箱が用意できないのなら、「自立支援センター入所待ち」として、先に自立支援センターに住民登録を可能とするような措置も考えられるでしょう。

  1. 特別定額給付金の受け取りのためには住民登録が必須
  2. 住民登録すれば必ず払う
  3. 自立支援センターなら住民登録できる

 これらはわれわれが求めたことではなく、大阪市が自ら決定し、宣言したことです。宣言したことについて、根本的な問題が発覚したのであれば、当然その問題の解決を責任を持って行うのが行政の役割です。

新たに発覚した問題

 この後、住民情報担当、自立支援課ホームレス自立支援グループにも要望書を提出し、これまでの経緯を説明しました。この間の定額給付金担当とのやりとりは何も伝わっておらず、「要望に回答できる準備は十分にしておく」と中谷係長が言っていたのも、事実とは異なるようでした。

 ホームレス自立支援グループの係長すら、自立支援センター入所時の金銭管理の知識がなく、基本的な事実を把握できていないようでした。また、自立支援センターで住民登録すること自体は可能だが、「住民登録をするための施設ではありません」とも言っていました。大阪市長定額給付金担当は、現場との調整もなく、つじつま合わせで大切なことを決定し、説明してしまっていることがわかりました。

 十分な下調べを行わずに協議の場で回答をしたことも問題ですし、十分な下調べをせずにトップダウンで決定していることも問題ですが、いずれにせよその責任を果たすのが行政の仕事になります。これは、市民が要望するかしないか、要望に書いてあるか書いていないとは、まったく次元の異なる当たり前の大前提です。

今後の予定

 1時間ほどの堂々巡りのやりとりがありましたが、今回の要望にかんして、中谷係長は6月中に文書回答はするが、協議は7月6日と譲らず、6月24日までに文書回答するとの言質を得ました。

2020年6月11日(木)特別定額給付金に関する追加の要望書

大阪市長 松井一郎
2020年6月11日
大阪城公園よろず相談・釜ヶ崎センター開放行動・釜ヶ崎トロールの会・長居公園仲間の会

要望書
 住民登録が消除されるなど大阪市内に住民登録のない野宿者などに対する定額給付金受給の条件として、大阪市は自立支援センターで住民登録するよう回答している。
 自立支援センターなどの収容施設に入ることを定額給付金の受給の条件とすることは、住民に条件なく定額給付金が受給できるようにするという政府の方針から逸脱する差別であり到底認められるものではない。また公式統計でも大阪市内に1000人以上の野宿者がいる中で、追加入所可能なのが50人程度の定員でしかない自立支援センターを、総務省は住民登録の設定場所として勧めている。これは、全ての人に定額給付金を給付するという職務を放棄していると言わざるを得ない。簡易宿泊所でも住民登録できるようにしているのであれば、あいりん臨時夜間緊急宿泊所(シェルター)でも住民登録が行えるようにするべきである。また、住民登録が大阪市内になくても、DV被害者のように野宿者などに対して大阪市や支援団体で確認書を発行して定額給付金を支給することも実現できる。また無戸籍者のように巡回相談や行政相談の記録を本人証明にすることもできるはずである.。2007年に大阪市が約2100人の住民登録を職権消除したが、それまで住民登録ができていた、ふるさとの家、釜ヶ崎支援機構、釜ヶ崎解放会館に再び住民登録ができるようにするべきである。あくまで住民登録を定額給付金支給の条件とするならば、だれもが住民登録できる場所を大阪市は確保するべきだ。
以下、要求する。

  1. 総務省に対し、住民基本台帳への登録にこだわらない特別定額給付金の支給の道筋を求めること。
  2. それが難しい場合、定まった住所を持てない者に対し、住民基本台帳への登録を可能にする代替手段を現場の運用によって実質的に確保すること。
  3. なお、これらの要望の実現には、定額給付金担当はもちろん、市民局総務部住民情報グループ、福祉局自立支援課ホームレス自立支援グループの参加が最低限必要である。考えられる最大限の努力を行なったか否かの報告と説明は、上記の3者出席のうえ、行うこと。なお、上記の3者からはできれば課長級以上の職員が出席すること。

2020年6月8日(月)「野宿者および不安定居住者に対する特別定額給付金についての要望」団体協議の報告

 2020年6月8日(月)午後1時から午後3時に「野宿者および不安定居住者に対する特別定額給付金についての要望」にかんして大阪市定額給付金担当)と団体協議を行いました。

 日本国内で新型コロナウイルスの感染拡大で困っている人に広く支給されるのが特別定額給付金です。このお金はホームレスの人たちにも行き渡るようにすることが明言されています。ところが住民基本台帳に記載されていることを基準に支給するというおかしなことを言っています。今回の要望は、住民票にかかわりなく、支給されるように求めるものです。

何もする気のない大阪市の回答

 回答書の段階でも示されていたように、大阪市総務省の取り決め以上のことをするつもりはないという姿勢を一切崩しませんでした。

 6月4日の市長会見で、松井市長が、口座を持っていない人には現金で渡すこと、ホームレスの人は自立支援センターに入所して住民登録をしてもらうという方針を述べていました。

 DV被害者については、確認書があれば、住民登録の住所にかかわらず、本人への支給が可能であることが示されています。また、無戸籍者に対しても支給は可能であり、そのために取るべき手続きも総務省により示されています。

 DV被害者の場合、現在地以前に住民登録そのものはなされていたことを根拠に、大阪市住民基本台帳が支給の条件であるような説明を繰り返していました。しかし、これらの取り扱いの指示は、住民基本台帳が最大公約数としての対象者把握の出発点にすぎず、そこから外れるケースについてはそれぞれ配慮すべきであることを証明するものです。これをあくまで「住民基本台帳に登録するための配慮」であるというなら、野宿者に対してもその事情に即した「配慮」をする必要があります。「配慮」を「しない理由」はどこにもありません。

どこに住民登録できるのか

 松井市長が会見で述べていた自立支援センターに住民登録をすることについて説明を求めたところ、「要望に書かれていないことには答えられない」などといって言い逃れを繰り返しました。

 事前の打ち合わせの段階でも、住民票について説明できる住民情報担当の出席を求めましたが、「要望に住民票のことは入っていないから呼ぶことはできない」と頑なに拒まれました。「よそから担当者を呼ぶことはできないが、関係する事項についてはきちんと回答できるように確認をしておく」と言っていたにもかかわらず、定額給付金担当の中谷係長は、現在の自立支援センターの運用実態すら把握できていませんでした。

 自立支援センターの定員を問うと答えられず、福祉局自立支援課ホームレス自立支援グループに確認に行かせると定員112名、現在の入所者56名ということがわかりました。2019年1月の全国調査で大阪市のホームレスは1,002人という結果が出ており、現在の自立支援センターに入所し、住民登録をする形では、大半の野宿者は定額給付金を受け取れないことになります。このことからも、大阪市はまともな検討すらしていないことがわかりました。

 また、6月から、野宿者に対して特別定額給付金支給の案内のチラシの配布を開始したとの説明がありましたが、少なくとも釜ヶ崎長居公園の仲間のあいだでは、そのようなチラシを渡されたという人はいませんでした。

今後の予定

 以上のように、協議とは名ばかりで、「国の方針に従うだけ」「要望に書かれていないことは答えられない」などと言って、ごまかしているだけであり、また、大阪市側から発表したことであるにもかかわらず、野宿者の住民登録について、まともな検討を行なっていないことが明らかになりました。

 最終的に、DV被害者の扱いに準じた現在地での給付を野宿者に対しても適用できないか、という1点に関して総務省に対して問い合わせの上、次回の協議で回答することを約束させました。

 こちらの求めた自立支援課、住民情報グループの協議の出席は、新たな要望書を出してもらわないとできないと譲らなかったため、新たな要望書を検討しています。

 次回の協議の日程について、今週中に中谷係長から連絡するとのことです。