大阪城公園よろず相談

大阪城公園を中心に野宿者支援活動を続けている大阪城公園よろず相談のブログです。

2020年5月16日(土)第30回「センターの日」——西成労働センターは戻ってこない?

2020年5月16日(土)第30回「センターの日」のあらまし

 珍しく雨模様での「センターの日」になりました。12時から準備をしていると、「今日は「センターの日」やろ?」と早くも顔を出してくれる人がいました。

 雨が止みそうもないので、団結小屋の表のブルーシートを外させてもらって、テントの下でコーヒーを飲みながらテレビドキュメンタリーを観ました。

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「ヤジと民主主義」

 今回は北海道放送で4月26日に放送された「ヤジと民主主義」というドキュメンタリーを観ました。2019年の参議院選挙の際、応援演説に訪れた安倍晋三にヤジを飛ばした人たちが警察に取り囲まれ、執拗につきまとわれた事件がありました。

 ヤジを飛ばすでもなく、プラカードを持っているだけの人たちも、警察に取り囲まれ、演説に近づけないようにようにされていました。

 この時、警察に嫌がらせをされた人が「センターの日」に足を運んでくれたことがあります。いろんなおかしなことがあってもぶつけることができない、警察に不当な扱いを受ける、釜ヶ崎の労働者が日々経験していることだと思います。

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「野宿者および不安定居住者に対する特別定額給付金についての要望」

 前回お知らせしたように、住民登録ができない人にも特別定額給付金を直接現金給付するように大阪市に要望書を出し、6月8日(月)に団体協議の場を持ちました。

 5月18日(月)に受け取った要望への回答書では、「大阪市は国の方針にしたがって支給するだけ」「住民登録をしないと支給しない」「現金でわたすことはない」と、単に総務省が示した大雑把な指針を述べるだけの内容で、要望に対する「回答」とはとても言えないものでした。団体協議の場でも、基本的には同じことを繰り返すだけのバカにした対応でした。

 団体協議の日に先立つ6月4日(木)に大阪市長が市長会見で、突然「ホームレスの人たちに対する特別定額給付金の支給」について発表する一幕があり、口座を持っていない人には現金で渡すこと、ホームレスの人は自立支援センターに入所して住民登録をしてもらうという方針を述べていました。

 DV被害者については、確認書があれば、住民登録の住所にかかわらず、本人への支給が可能であることが示されています。また、無戸籍者に対しても支給は可能であり、そのために取るべき手続きも総務省により示されています。

 DV被害者の場合、現在地以前に住民登録そのものはなされていたことを根拠に、大阪市住民基本台帳が支給の条件であるような説明を繰り返していました。しかし、これらの取り扱いの指示は、住民基本台帳が最大公約数としての対象者把握の出発点にすぎず、そこから外れるケースについてはそれぞれ配慮すべきであることを証明するものです。これをあくまで「住民基本台帳に登録するための配慮」であるというなら、野宿者に対してもその事情に即した「配慮」をする必要があります。「配慮」を「しない理由」はどこにもありません。

 自立支援センターの定員を問うと答えられず、福祉局自立支援課ホームレス自立支援グループに確認に行かせると定員112名、現在の入所者56名ということがわかりました。2019年1月の全国調査で大阪市のホームレスは1,002人という結果が出ており、現在の自立支援センターに入所し、住民登録をする形では、大半の野宿者は定額給付金を受け取れないことになります。このことからも、大阪市はまともな検討すらしていないことがわかりました。

 DV被害者の扱いに準じた現在地での給付を野宿者に対しても適用できないか、という1点に関して総務省に対して問い合わせの上、次回の協議で回答することを約束させました。

 また、こちらの求めた自立支援課、住民情報グループの協議の出席は、新たな要望書を出してもらわないとできないと譲らなかったため、新たな要望書を6月11日(木)に提出しました。

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西成労働福祉センターは新しいセンターに戻ってこない?

 かまやん「え〜 戻ってくるんかい! 知らんかったぁ」「何度もそう書いてあんねんけど」というポスターがセンター内やセンター周辺に貼られていたのを覚えていますか? あいりん職安も西成労働福祉センターも、センターの元の敷地に市営住宅を加えたところに新しくなって戻ってくる、そのように説明されていました。どうやらこの話は怪しくなってきました。

 まず、あいりん職安は、もともとアブレ手当の給付くらいしかやっていません。国の政策として白手帳を無くそうという動きがある現在、そのまま戻ってきたとしてもあいりん職安は縮小され、いずれ無くされてしまうかもしれません。そうならないために、職安の機能を強化させたいという考えが、労働施設検討会議の参加者の一部の念頭にあるようです。

 次に西成労働福祉センターです。センターの職業紹介の核となるのは西成労働福祉センターの方で、技能講習や労災など、労働者を支えるために組み立てられています。どうやら、こういった西成労働福祉センターの機能をバラバラにしてしまおうという動きが、労働施設検討会議で明かされないままに進行しているようです。

 現在の西成労働福祉センターは大阪府が100%出資する外郭団体であり、そのような資金配分は公的資金の使い方として望ましくないという意見が出ているとのことです。そこで、職業紹介、技能講習、労災担当など、現在の西成労働福祉センターの窓口の機能ごとに、委託業者を競争入札する形に変えられようとしているそうです。

 そんなことになれば、窓口を横断して対応するような融通は効かなくなります。また、ある窓口は入札後も継続されたとしても、別の窓口はまったく別の業者が委託するというようなことが起きてしまえば、これまで西成労働福祉センターが蓄積してきた知識やノウハウは失われてしまうでしょう。釜ヶ崎のことなどろくに知らない業者が形ばかりの業務を「安く」こなすだけになってしまいます。

 センターは「パワーアップして戻ってくる」などと説明されてきましたが、現在までのセンターの職業紹介を担う部分がまったく別物になってしまう以上「パワーダウンするし、実質戻ってもこない」ことになるのは確実です。

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主役はどこにいる?

 あいりん地域まちづくり会議には、テーブルの上に出されていないことがたくさんあるようです。労働施設検討会議を見ていても、それまでの会議では聞いたこともないようなことを、毎回のように行政が出してきます。会議室の外にいる圧倒的な大多数がものを言わなければ、話し合いなどいくらでもごまかしがきいてしまいます。

 「何か言いたければ話し合いの場に参加しろ」とは正論のように聞こえますが、正論がねじ曲げられているのだから、まず「おかしいやろ!」という人間が本当の主役にならなければ、話し合いなどはじまらないのではないでしょうか。