大阪城公園よろず相談

大阪城公園を中心に野宿者支援活動を続けている大阪城公園よろず相談のブログです。

2020年6月11日(木)特別定額給付金に関する追加の要望書を提出しました

どこにあるかわからない相談窓口、なかなか現れない担当者

 特別定額給付金に関する追加の要望書を提出してきました。定額給付金担当の窓口がどこにあるのかは非公開であるため、総務担当から定額給付金担当の中谷係長を呼んでいただく形になりました。中谷さんが現れたのは30分経ってからでした。

 前回の協議で、大阪市は「要望に書かれていないことには答えられない」「要望に関係のない担当を呼ぶことはできない」といって、説明責任をごまかし続けました。今回の要望書は態度を変えない大阪市に合わせて、不本意ながら提出するようなものです。

特別定額給付金は水際作戦!?

 大阪市定額給付金担当の電話は06-6263-0568ですが、これまで1度もつながった試しがなく、いつも総務担当に伝言を預けて、先方からかけ直してもらう形でしか連絡がつきません。

 特別定額給付金の支給について野宿者に情報提供するために、6月から6,000枚のチラシを配布しはじめたと6月8日(月)の協議で聞いています。このチラシに記載されている相談窓口の電話番号は、0570ではじまるナビダイヤルのものです。試しにかけてみたところ、「電話が混み合っているため、順番におつなぎします」「なお、2分経ったら自動的に切断されます」と、自動音声の応答が流れました。もちろん通話料は発信者持ちです。窓口は公開されていないので直接相談に行くこともできないし、電話もつながらないとなれば、こんなチラシを配っても何の意味もありません。

 またこのチラシには「令和2年4月27日現在で、住民基本台帳に記録されている方が給付の対象となります」と大きく書かれており、すでに手遅れであるかのような印象を与えるものになっています。

要望に対しても水際作戦

 ずっとやりとりをしている定額給付金担当の係長が現れてからも、なかなか話が進みません。「新しく要望書を出してもらわないと対応できない」「継続協議の日程は今週中に連絡する」との約束があるにもかかわらず、「6月、7月は協議のための部屋が取れない」といって、その場で日程について回答しようとしません。

 こちらで事前に問い合わせ、7月6日は同じ会議室が空いていると確認した旨を告げると、一転して「7月6日にできるかどうか調整しているところだった」と言いはじめました。しかし、6月8日に協議をして、次の協議がほとんど1ヶ月後というのでは、協議を繰り返しているうちに特別定額給付金の給付期限である8月25日を超えてしまいます。

 「部屋がない」「協議の参加人数を15人に減らしてくれればいつでもできる」などといって、日程を先延ばししようとします。野外でも構わないし、教職員組合は市役所の屋上で話し合いの場を持った事実を示しても、「野外ではできない」「部屋がない」と繰り返していました。

 代替手段をこちらから提示しているにもかかわらず、「部屋がない」などといって協議を先延ばしにして給付期限を超えてしまえば、それは大阪市の手続き上の過失になります。その場合、大阪市として責任を持って給付を実施するのかと問いましたが、「それはわからない」といって、明確な答えはありませんでした。

大阪市が要望に対して果たすべき責任

 今回の要望書では、定額給付金担当に加え、住民情報担当、福祉局自立支援課ホームレス自立支援グループも参加の上、要望に応える責任を負うことを求めています。

 そのほか、次の二点を改めて整理して盛り込みました。

  1. 総務省に対し、住民基本台帳への登録にこだわらない特別定額給付金の支給の道筋を求めること
  2. それが難しい場合、定まった住所を持てない者に対し、住民基本台帳への登録を可能にする代替手段を現場の運用によって実質的に確保すること

 これまで大阪市がやったのは、総務省に見解を確認しただけで、われわれの要望に応えるための具体的な行動は何も取っていません。話し合う前にやっておくべきことをやっていないのだから、前回の協議は協議の体裁をなしていなかったことになります。とはいえ、一点目にかんしては、相手がいることなので、何日までにと迫られても、必ずしもすぐに答えが出せない場合もあるでしょう。

 しかし、二点目については、大阪市単体の責任で行わなければならないことです。さらには、大阪市の方から「自立支援センターに入所して住民登録して下さい」と言いだしたことです。これは6月4日の大阪市長自身が市長会見で述べたことでもあります。ネットカフェや簡易宿所なども住民登録を可能とすべきという見解が総務省からも示されていますが、宿泊費が捻出できるなら野宿などしていないし、現金収入が断たれてそれらの施設を利用できなくなった人たちまでいるのが現実です。

 その自立支援センターの運用実態についても、先日の協議の際、担当者はまったく把握できていませんでした。2019年1月の概数調査によれば、大阪市のホームレス数は1,002人となっています。それに対し、自立支援センターの定員は112名、現在の入所者は56名とのことで、自立支援センターに入所して住民登録が可能なのは、1,002人のうち6%未満にしかなりません。

 住民登録の有無を支給条件としないことを求めるわれわれの要望に対し、「住民登録しなければ特別定額給付金の支給対象にはならない」という姿勢を崩さず、それが難しいから要望に来ていることを承知で「住民登録さえしていただければ特別定額給付金を支給する」と言っていました。

 そして、「住民登録したければ自立支援センターに入ればいい」と後から付け加えました。多くの野宿者にとって、自立支援センターに入所しても自活できるような安定した仕事を見つけるのは難しく、せっかく築いた野宿生活でも食べていける基盤を捨てるリスクの方が大きいのが実際です。

 そのようなジレンマを抱えざるをえない自立支援センターを、野宿者が住民登録するための唯一の選択肢のように提示しておきながら、全体の数%しか利用できないとはどういうことでしょうか。大阪市自ら言い出したことである以上、特別定額給付金の申請と受け入れに十分間に合う期間内に、1,000人でも2,000人でも自立支援センターに入所できる体制を整える責任があります。

 箱が用意できないのなら、「自立支援センター入所待ち」として、先に自立支援センターに住民登録を可能とするような措置も考えられるでしょう。

  1. 特別定額給付金の受け取りのためには住民登録が必須
  2. 住民登録すれば必ず払う
  3. 自立支援センターなら住民登録できる

 これらはわれわれが求めたことではなく、大阪市が自ら決定し、宣言したことです。宣言したことについて、根本的な問題が発覚したのであれば、当然その問題の解決を責任を持って行うのが行政の役割です。

新たに発覚した問題

 この後、住民情報担当、自立支援課ホームレス自立支援グループにも要望書を提出し、これまでの経緯を説明しました。この間の定額給付金担当とのやりとりは何も伝わっておらず、「要望に回答できる準備は十分にしておく」と中谷係長が言っていたのも、事実とは異なるようでした。

 ホームレス自立支援グループの係長すら、自立支援センター入所時の金銭管理の知識がなく、基本的な事実を把握できていないようでした。また、自立支援センターで住民登録すること自体は可能だが、「住民登録をするための施設ではありません」とも言っていました。大阪市長定額給付金担当は、現場との調整もなく、つじつま合わせで大切なことを決定し、説明してしまっていることがわかりました。

 十分な下調べを行わずに協議の場で回答をしたことも問題ですし、十分な下調べをせずにトップダウンで決定していることも問題ですが、いずれにせよその責任を果たすのが行政の仕事になります。これは、市民が要望するかしないか、要望に書いてあるか書いていないとは、まったく次元の異なる当たり前の大前提です。

今後の予定

 1時間ほどの堂々巡りのやりとりがありましたが、今回の要望にかんして、中谷係長は6月中に文書回答はするが、協議は7月6日と譲らず、6月24日までに文書回答するとの言質を得ました。