大阪城公園よろず相談

大阪城公園を中心に野宿者支援活動を続けている大阪城公園よろず相談のブログです。

2015年3月23日(月)大阪城公園のPMO事業実施への緊急抗議書文

 2015年3月23日に大阪市に提出した抗議書文を参考資料としてアップします。

大阪市長 橋下徹

大阪市経済戦略局 御中

大阪市建設局 御中

大阪市教育委員会事務局 御中

大阪城公園のPMO事業実施への緊急抗議書文

 私たちは、大阪城公園で野宿者の権利擁護の活動をしているグループです。

 4月1日から実施されるPMO事業についての詳細を、私たちは大阪市のホームページ上で読みました。読んでびっくりしました。

 この事業はこれまでの指定管理者制度とは大きく違い、単なる公園管理業務の委託ではなく、公園の公共性を解体し、私権へとゆだねる性格のものであり、公園の主権が市民の手から奪われるとんでもないしくみになっています。

 にもかかわらず、大阪市は従来の事業者向けの指定管理者公募の行の中にこの計画を巧妙に紛れ込ませながら、市民全体に周知徹底しないままこの事業を推し進めています。そして何食わぬ顔で来週には公園を電通などの企業に明け渡すつもりであるという事態に、怒りを禁じえません。

 「都市公園の健全な発達を図り、もつて公共の福祉の増進に資すること」 と、都市公園法の第1条の(目的)にはあります。これまで、この公共性が担保されるために公園管理に対して税金が使われてきたのはいうまでもありません。そして大阪市は、その公共性をふりかざして、生きるためにテントを建てて暮らしてきた野宿者を行政代執行まで持ち出して排除してきました。しかし今度は、その大阪市が公共性そのものを放棄し、企業に売り渡すのです。

 しかも、PMO事業の「一般園地の管理運営に関する事項」の中で、ホームレス対策として、「移動型ホームレス等に対しては、*公園内で起居をさせないよう*聴聞を行うとともに、本市に状況報告のうえ、連携しながら対応すること。」と野宿者排除を明記しています。「テント・小屋掛け」に関わらず、ただ居るだけで取り締まれと読み取れる差別管理を指示しています。

 さらに公園全域の有料化の可能性も示されています。税金を投入せず、入場料を取るとなれば、もはや公園ではなく、単なる商業施設です。

 大阪市の地図から大阪城公園の分だけスポッと失われる。誰もが入ることのできた空間が突然姿を変え、巨大なテーマパークに変わるなど、悪夢としかいいようがありません。

 私たちは、差別管理を謳い、市民の財産である公園を盗む大阪城公園PMO事業に強く抗議します。

2015年3月23日

大阪城公園よろず相談

「大阪市ホームレスの自立の支援等に関する実施計画【2019(平成31)年度~2023(平成35)年度】(素案)」についてのパブリック・コメント

 「大阪市ホームレスの自立の支援等に関する実施計画【2019(平成31)年度~2023(平成35)年度】(素案)」についてのパブリック・コメント募集( http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/fukushi/0000454696.html )に対して、大阪城公園よろず相談では以下をメールにて提出しました。

 私たちは大阪城公園よろず相談として、20年近くに渡って野宿者支援活動をしてきました。

 この度、「大阪市ホームレスの自立の支援等に関する実施計画【2019(平成31)年度~2023(平成35)年度】(素案)」についてのパブリック・コメント募集に際し、意見を送らせていただきます。

 計画全体として気になったところを大まかにまとめると4点あります。

  1. やたらと「自立」を強調し、自立とは切り離されたところで保障されるべきことまで、自立支援の問題にはめ込んでしまっている点
  2. 「ホームレス支援」とは関係のないことが計画に含まれている点
  3. 現に野宿していたり、野宿の経験のある人への対策は書かれているが、新たに野宿生活に陥るリスクへの対策は見られない点
  4. 「あいりん地域」の「西成特区構想」に関わる動向を含めた取り組みへの懸念

 以上の4点の詳細、およびその他、気になった点についてはページ数を明記した上で以下にコメントを書きましたので、ご参照下さい。

p.1 野宿生活ないしホームレス生活を送る人びとを指して「ホームレス」と称しているのは不適切です。散々指摘されていることですが、「ホームレス」とは状態を指す言葉であり、人間の固有の属性を表現する言葉ではありません。「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」や国の施策における呼称がどうあれ、真摯に向き合うつもりがあるなら、「ホームレス生活(野宿生活)にある人が」などとすべきでしょう。実際に「野宿生活を余儀なくされた人」(p.1)という表現も見られます。一方で「野宿生活を脱した後、再路上化するホームレス」(p.1)という表現も見られます。野宿生活を脱したのであれば「ホームレス」ではないのに、相変わらず「ホームレス」であり、「ホームレス」になったようにとらえた書き方は時制の認識が無茶苦茶で、文法的にも誤っています。

 ホームレス問題にかかわる人たちのあいだでは「広義のホームレス状態」と「狭義のホームレス状態」の区分はすでに常識とも言えるものです。「屋根のある場所と路上を行き来する」若年層や、再路上化への対策の必要性を認識しているなら、用語にはもっと敏感であるべきでしょう。

 「公共施設の適正な利用が妨げられる」ことと「ホームレスが襲撃され被害を受ける」ことを、野宿生活者が「公共施設等を起居の場として日常生活を送る」ことによって引き起こされる事案として、同列に並べることにも疑問があります。そもそも、これらは因果関係の下に位置付けるべきものではありません。まるで「お前らが公共施設で寝起きしているのが悪い」と言わんばかりです。また、公共施設でなくとも野宿生活をしていれば襲撃の危険があることに代わりはなく、ことさらに「公共施設」を強調している点もおおかしいと思います。

p.2 「あいりん地域」に日雇労働者が多数存在するのは、高度経済成長期に政策的に集められたためです。行政に責任の一端があることを自覚して下さい。

p.10 「今のままでよい」を「自立意欲の低下」と評価するのは短絡的です。野宿生活者の多くが何らかの仕事をしています。また、自立意欲とは何を指すのかも曖昧です。

 「就職するために望む支援」のうち、「アパートの確保」55.2%が最も高いことを考えれば、無条件に住宅を保証する施策があってもよいはずです。そうなればそもそも「ホームレス」ではなくなります。生活保護に抵抗感を持つ人でも利用できるような制度の構築、実施を検討して下さい。

p.11 テント等の数が減った背景には、行政代執行を含む強制立ち退きが含まれています。また、「テントを建てさせない」ような働きかけもしつこくやっているはずです。「公共施設の適正な利用の回復の取り組み」がこのような取り組みを指すのであれば、単に野宿生活をする人たちをより苦しい状況に追い込んでいることになります。

p.12-13 自立支援センターの入所期間が短期間に区切られていること、原則として再入所できないといった問題については改善されているのでしょうか? 履歴書に自立支援センターの住所が書いてある時点で採用選考から弾かれてしまう問題が起きていることを考えれば、住宅の確保を最低限保証すべきです。「賃貸住宅型自立支援事業」がその一部なのかもしれませんが、住居の確保は自立支援とは切り離して最低限の権利として保証すべきです。繰り返しになりますが、住居があれば、少なくともホームレスではありません。

p.13 「あいりん日雇労働者自立支援事業」については、西成特区構想の中で推進されている「あいりん地域まちづくり会議」の「労働施設検討部会」で、事業の根幹を揺るがすような議論が進んでいます。労働者が日頃から利用するあいりん総合センターの仮移転、建て替え計画は、仮移転中の労働者の過ごし方や、建て替え案のないままスケジュールのみ前倒しされ、現センターを閉鎖するといった本末転倒なことがなされています。西成労働福祉センターの仮移転先では、相対紹介を廃止する動きも決定しているように聞いています。相対紹介が望ましい就労形態であるか否かは議論の余地があるとしても、求人業者の足が遠のくような無計画な仮移転では意味がありません。また、西成労働福祉センターとあいりん職安に仕事が集まるような労働政策をしっかり実施していくべきです。建設下層労働はますます見えづらく、アンダーグラウンド化しています。寄せ場の求人数だけの問題ではなく、不安定就労者全体にかかわる問題として、地域の労働関連機関の役割と機能の強化をして行くべきです。

 また、西成特区構想によって「あいりん地域」がきれいになった、良くなったと大阪市はアピールしていますが、野宿生活を送る人たちの姿は絶えず、そればかりか、排除の圧力は強まっています。表層的な成果を擬装するのではなく、生身の労働者の生活と向き合った行政を心がけて下さい。

第3 ホームレス対策の推進

p.16 「ホームレス自らの能力の活用を図る」とあるように、どこを読んでも個人責任を強調する姿勢に疑問を覚えます。「既存の各種施策も活用しながら」では根本的な問題解決にはなりません。路上生活を送る人がいなくならないのは行政の支援や政策の欠陥が原因であることを自覚し、強制立ち退きをせず、真摯な態度で粘り強く問題解決には取り組まねばなりません。

p.18 自立支援センターの退所者へのアフターケアがどこまでなされているのか疑問です。退所者へのアフターケアにまつわる報告を耳にしたことがありません。不利な立場に置かれた人びとが、安定した職につき、安定した住居を失わないようにするためには何が必要かを明らかにするためにも、アフターケアや追跡調査には力を入れる必要があります。

 「店舗から支援要請があれば支援を行います」とはどういう意味でしょうか? 実施計画の記述だけでは判断ができません。実施計画自体が十分に練られていないのではないでしょうか。

p.19 「地域における生活環境の改善」の項目に挙げられている内容は「ホームレスの自立の支援等」の計画に掲載すること自体不適切です。野宿生活を送る人たちにとっての問題ではないものが掲載されているのは奇妙なことだという意識を持って、なにが問題なのかを問い直すべきです。

 人権擁護という意味では、この計画の中にも見られる事実の混同、文言の意味不用意さを改めるところから始めて下さい。

p.20 数値目標をあげて施策を推進するのは場合によりけりではないでしょうか。当事者にとって望ましい選択肢が用意されていない状態で、絞られた数値目標を上げてよいものか、疑問が残ります。

 「自立支援センター入所者の80%以上が就職できるようにします」という目標は結構なことですが、残りの20%はどうするつもりなのでしょうか。期限切れで退所になっても、それは仕方ないということでしょうか。言及がないのは施策の不備ではないでしょうか。

 「あいりん地域における日雇労働者の相談者の10%以上を」という目標数値の低さが気になります。また、「相談者の」とある意味もよくわかりません。

p.26 「ホームレスに対し緊急に行うべき援助について」ですが、野宿生活者が救急搬送された際に対応に当たる「大阪市緊急入院保護業務センター」は廃止すべきです。特別なケースに対して手厚い対応がなされるというより、通常とは異なるイレギュラーな対応の温床となっているように見受けられます。どのような状況の人であれ、等しく人権に配慮した救急対応がなされるように、各行政窓口の体制を指導監督することで問題解決が可能です。「大阪市緊急入院保護業務センター」の担当になったがために病院をたらい回しにされたり、生活保護で施設に入れられたまま、アパート生活への移行ができなくなるケースも見たことがあります。

 生活保護にかんしては、区役所の窓口で未だに水際作戦による申請拒否が行われています。担当の役所の移管のタイミングで保護を打ち切るといった悪質な行為についても耳にしました。大阪市では「生活保護の適正化」といって、不正受給の取り締まりにばかり力を入れてアピールに熱心なようですが、困っている人を助けるという意味での「適正化」の方が急務かと思われます。

p.27 野宿生活を送る人たちを強制立ち退きさせる行政が人権擁護を口にしても欺瞞にしかなりません。地域からの苦情があったとしても、強制立ち退きはしないことを説明し、地域の人と対話することこそ、人権擁護につながるはずです。ある公園では大阪市役所の職員から「お前のような乞食はブタ箱に入れ」と恫喝されたという相談を受けたことがあります。内部の意識改革に力を入れて下さい。

 繰り返しになりますが、「生活環境の改善に関する事項」は、ホームレス状態にある人たちへの支援とは何の関係もありません。計画からの削除を求めます。

 冒頭に「新たに野宿生活になることを防止する」とありますが、再路上化については触れられていても、新たに野宿生活になることを防止するための施策が盛り込まれているとは思えませんでした。なぜ人は野宿生活になるのかについて、体系的、構造的な理解が不足しているようです。きれいごとを並べるのではなく、確かな現状認識を持ち、「ホームレス」一般ではなく、一人一人が困難を抱えたふつうの人たちであることを理解した上で、誰も排除されない社会を実現する行政を実践して下さい。

 

 大阪城公園よろず相談一同

2019年2月14日(木)夜回り・商業主義によるさらなる公園破壊

 前回の夜回りの際、有料児童遊戯施設の奥のカイヅカイブキの一群に伐採を予告する書面がくくりつけられているのを発見しました。森ノ宮側の噴水の周りにはカイヅカイブキが大量に植えられていて、公園に緑の色あいを添えていました。2016年頃、台風でこのカイヅカイブキの何本かが傾くといった出来事がありました。倒木の危険を理由に、この一帯に立ち入り禁止のロープが張り巡らされ、何の対策がとられることもなく、1年以上放置され、下草も伸び放題になっていました。

 2017年末に突如、白い鉄板で覆われ、2018年頭に「便益施設」の建設が発表され、樹木を大量に伐採して、スタバを含む多くの商業施設が同年5月にオープンしました。倒木云々は口実にすぎず、また金もうけ施設建設までの待機状態として、意味もなく封鎖されていたわけです。

 2018年3月には大規模な劇場を作るためといって、公園東側の樹木が一面まるまる伐り倒されました。今回の伐採はこの劇場の南側で、カイヅカイブキを伐採後は市民の寄付金でサトザクラを植えるそうです。大阪城公園内には現在も昨年9月の台風による倒木が山積みになっています。その台風でも倒れなかったカイヅカイブキを「倒木のおそれがある」ので伐り倒し、市民の寄付金で桜、つまり人集めと金もうけに役立つ木を植えるというのです。

 ちなみにこの伐採と植樹は大阪城パークセンターではなく大阪市建設局と大阪城公園事務所の名義で告知されていました。いつもながらのしらじらしいつじつま合わせでも、市民の大勢には十分と高をくくっているのでしょう。

大阪城公園では、指定管理者制度を導入してから、木を/208本伐採して駐車場を造り/405本伐採してジョー・テラス・オオサカを造り/175本伐採してカフェ等を造り/338本伐採してクールジャパンパーク大阪(吉本劇場)を造り/せせらぎを潰しました。」(あおむらさきさんのツイートより https://twitter.com/aomurasaki_ll/status/1088773682850234369?s=21
 

第16回「センターの日」のお知らせ

今何ができるのか

 

 センター閉鎖を前にして、さまざまな動きがあるようですが、もう一つ決め手を欠いています。月に一度の「センターの日」も選択を迫られているように感じられます。

 しかし、「センターの日」が見てきたのは、今日、明日と続いていく労働者の生活でした。センターが閉鎖されようとされまいと向き合わなければならない毎日があります。

 「センターの日」をきっかけとして、労働者と同じようにこの街で起きていることと向き合い、考えたいと思います。

 焙煎コーヒーとならんで、労働者には古本が人気です。不要な本があればジャンルを問わずお持ちください。

場所・日時のご案内

 JR新今宮駅西口から地上に出て、国道の向かいのあいりん総合センター正面付近で、2019年2月16日(土)13時から16時に実施します(毎月第三土曜日)。ブルーシートとこたつ、コーヒーの焙煎の匂いを目印にお越し下さい。

これまでの「センターの日」

 これまでの報告はこちらです (第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 第15回)。

f:id:asitanorojo:20190213232834p:plain



 

2019年1月19日(土)第15回「センターの日」── 「まちづくり」の錯覚

第15回「センターの日」のあらまし

「センターの日」の基本スタイル?

 13時から準備をはじめ、14時からの映画上映までにビラを配布することで「センターの日」がすごくうまく回る手応えがありました。ようやく「センターの日」の平常のスタイルができあがったように思えます。

f:id:asitanorojo:20190213200330j:plain

 他にも、ヘンゼルとグレーテルが森に小石をまいて目印にしたように、柱柱に点々と「センターの日」のビラを貼ることで、こたつの場所までうまく目を引けるという発見もありました(立ち止まって見入っている姿があるのは同じ柱だったので、センターの中でも目に留まりやすく、足を止めやすい位置の柱があるのかもしれません)。

f:id:asitanorojo:20190213200354j:plain

 最初はスピーカーの音量がうるさすぎるだろうかと気になったものの、スクリーンの周りに人の列がぐるっとできると映画鑑賞を共有体験する空間がその音量の範囲で包み込むようにできあがっていました。調理台代わりのキャンプテーブルをいつも通り南側に向け、その右手の柱の陰にスクリーンを設置して映すと、コーヒーと映画がうまく混じり合って居心地のいい空間が生まれていました。

コーヒー

 コーヒーは、焙煎を10回したので60杯くらい入れた計算になるとのこと。前回、前々回と同じくらいです。現場で焙煎をして、3時間の枠内で入れられるのはこれが限界のようです。

f:id:asitanorojo:20190213200520j:plain

 「お茶はないか。緑茶」という人や「白湯が欲しい」という人もいました。焙煎コーヒーは「センターの日」の目玉でも、焙煎コーヒーを入れる待ち時間が辛いし、コーヒーでなくていいという人もいるなら、映画やおしゃべりのお供として別の簡易飲料を用意してもいいかもしれません。

f:id:asitanorojo:20190213200544j:plain

 紙コップがもったいないので、最近はプラスチックやホーローのカップを洗って返してくれるようにお願いしています。一緒に豆を挽いてくれた人も何人かおられました。共同炊事的な参加の糸口となっているように感じました。

古本コーナー

 いつも来てくれる人はもちろん、多くの人が立ち寄る人気コーナーになっています。メンバーが声かけをしてくれて来てくださった方や、知り合いからの寄付によって新しい本も追加できました。

f:id:asitanorojo:20190213200632j:plain

 常連のかたから「すごく助かってます」と言われました。1日に2冊のペースで読むとのこと。新今宮文庫の本はもう読み飽きてしまったそうです。古本コーナーに人気が集まるというのは、釜ヶ崎でくらす労働者の生活の一端をよく表していると思います。

ビラによるアピール

 より多くの人に読んでもらうことに注力して、いつもの緑のビラには踏み込んだことを書きました。もちろん、ビラにどれくらいのリアクションが得られるか、みなさんの胸に響くかはすぐにはわからないものの、古本放出を通してわかった釜ヶ崎の労働者の知識欲の強さ、活字を読み込むどん欲さを見込んで、お話をする切り口にと思い切りました。

f:id:asitanorojo:20190213200714j:plain

この1ヶ月の動向から

仮移転の前倒し

 昨年末、西成労働福祉センターとあいりん職安の仮移転日が3月11日に決まったという情報が入ってきました。1月15日発行の西成労働福祉センターの「センターだより」では正式なアナウンスが掲載されていました。このことを「センターの日」で話すと、ある人は「やっぱりそっちにはそういう情報が行ってるんやな!」と驚いていました。

 3月11日にセンター3階にあるふたつの行政機関が移転するということは、この日にセンターが閉鎖されるのではと懸念されたものの、3月末まで1階はこれまで通りの相対求人の場として利用することがわかりました。もしかすると3階は閉鎖されてしまうかもしれないと考え、「センターの日」で何かデモンストレーションができないかと話し合いました。

 たとえば、閉鎖1ヶ月前になる2月10日に「座り込み」ならぬ「寝込み」をやってみるかとか、18時にシャッターが下りるタイミングで何かアピールをするとか、アイデアを練ったものの、ほどなく3階も3月末までは閉鎖されないことがわかり、この計画は見送りになりました。

f:id:asitanorojo:20190213200842j:plain

二つの取り組み

 センター閉鎖を前にして、いくつかの団体が行動を起こしています。昨年から何度かセンターで集会を開いている「センターの未来を提案する行動委員会」は、センター閉鎖後の代替地の交渉を行政相手に進めているようです。毎日座り込みをしている稲垣さんの釜合労、釜ヶ崎公民権運動の人たちは、仮移転工事の不透明な部分を追求したり、センター閉鎖そのものに反対しています。

 この二つの取り組みは、西成特区構想によって提起された「あいりん地域まちづくり(検討)会議」に対するスタンスが異なります。前者はまちづくりの議論に前向きに参加し、未来の釜ヶ崎、未来のセンターを労働者のために実現しようという未来志向です。後者はまちづくりの議論の進め方そのものに懐疑的で、実際に生じている現在の排除を問題視して抗議行動に力を入れています。

 両者の考え、両者の取り組みは、どちらかがまちがっているものではないし、どちらも必要なものだと思います。たとえば、代替地の交渉とセンター閉鎖反対、どちらも同時に要求して構わないはずです。労働者の今の暮らし、労働者の今後の暮らし、これらは切り分けることのできない問題です。

f:id:asitanorojo:20190213200911j:plain

「まちづくり」の錯覚

 分断をもたらしているのはやはり「まちづくり」なのです。労働者の目に触れないところでセンターの建て替え案として勝手なイメージ図が描かれています。仮移転先のセンターでは相対紹介に代わる新システム導入がだいぶ前に決まっているにもかかわらず、労働者向けの説明会も開かれていません。

 「まちづくり」すなわち、同じ地域の住民が協力して問題を解決し、未来像を話し合うことを悪いという人はいません。しかし、住民参加は手段に過ぎません。にもかかわらず、「まちづくり」という言葉は一人歩きして、明るい未来が約束されているような錯覚を生み出します。

 これは、前回書いた「新しい公共性」と似ています。行政が担うのは公共性の高い領域であり、「行政=公共」と思われていました。しかし、行政機関特有の弊害もあります。その解決手段として企業や住民組織に行政が管理していた領域を部分的に委託するようになり、その管理のあり方が「新しい公共(性)」と呼ばれました。しかし、何が公共性であるかは、管理のあり方以前に議論しなければならないことで、公共性そのものに古いも新しいものありません。

f:id:asitanorojo:20190213200933j:plain

労働者がまちをつくってきた

 「不法占拠と都市のコモンズ」という視点について前回書きました。釜ヶ崎自体が都市のコモンズであり、「不法占拠」から発しながら、労働者が奪われた生活の権利を取り戻す場所となっていきました。「不法占拠」とは「都市のコモンズ」であり、最初から奪われている者が権利を取り戻すための「生きながらの階級闘争」なのです。

 すなわち、労働者は釜ヶ崎のまちを作ってきた主体であり、鈴木組闘争 、夏祭り、越冬闘争といったさまざまな闘争は労働者による「まちづくり」だったと言ってよいでしょう。このまちで働き、飯を食い、酒を飲んで休んではまた働く。労働者が生きる闘いこそが、このまちを作ってきたはずです。

 「まちづくり」の会議の中で、「再チャレンジできるまち」「セーフティネットの集積地」などと「まちづくり計画」に盛り込まれようとしていることは、労働者による「まちづくり」があって初めて出てきたことなのに、当の労働者の参加が顧みられないのはおかしなことです。

 「このまちでまちづくりをどうこう言うなら、まずここに来い」と言ってやりましょう。会議など、センターで公開でやればいいのではないでしょうか。労働者の目の前で言えるような議論をしなければなりません。

f:id:asitanorojo:20190213201040j:plain

カンパのお願い

 大阪城公園よろず相談の活動に賛同いただける方はカンパにご協力いただけると幸いです。以下の口座まで振り込みをお願いします。活動に関心のある方は一声おかけ下さい。夜回りや寄り合いのほか、哲学読書会やソフトボール大会、「センターの日」などの活動も行っています。

郵便振替

記号14080
番号32204771
大阪城公園よろず相談

郵貯以外からの振り込みの場合
店名 四〇八(ヨンゼロハチ)
店番 408
預金種目 普通預金
口座番号 3220477

2019年1月27日(日)寄り合い──3年ぶりの再開の裏で進む事態

ラソンで隔絶された森の中で

 全国的な冷え込みが予測され、近畿地方でも雪が降る可能性が高いという話でしたが、明るい日差しの下でゆったりとした雰囲気で寄り合いがの場を持てました。

f:id:asitanorojo:20190128083136j:plain

 昨年と同様、1月の寄り合いは大阪女子国際マラソンの日に当たりました。大阪城公園内もマラソンコースになっており、寄り合いをしている市民の森の横の園路を報道の車両やランナーが走り抜けて行きました。

f:id:asitanorojo:20190128083226j:plain

 交通規制がなされた森ノ宮駅前は多くの人の姿がありましたが、人の行き来ができないせいで大阪城公園内に入ると逆に外界から隔絶されたようでした。

f:id:asitanorojo:20190128083255j:plain

 夜回りの際の打ち合わせでは普通の持ち寄りという話だったのですが、よろずメンバーのHさんとKさんから希望があり、これもまた昨年と同じくおでんになりました。

f:id:asitanorojo:20190128083326j:plain

 揚羽屋からお惣菜をいくつも差し入れをいただき、美味しくいただきました。どれも好評でした。

3年ぶりの再会

 今回は久しぶりに再会できたHさんが来てくれました。もともとは東屋で寝ていた人で、東屋が閉鎖されたあとは釜ヶ崎はもちろん、扇町天王寺公園など、あちこちで野宿していたそうです。

f:id:asitanorojo:20190128083414j:plain

 天王寺公園といえば、2016年に夜間閉鎖による追い出しがありました。Hさんはまさに追い出しされた公園入り口で野宿していて、テレビのニュースで顔と実名をでかでかと流されてしまったそうです。当時のニュースのテレビ画面のキャプチャー画像を保存していたので本人に見せると、やはり彼でした。

f:id:asitanorojo:20190128083651j:plain

 私たちは気づきませんでしたが、「センターの日」をやっているところを見かけていたことも明らかになりました。2019年3月末のあいりん総合センター閉鎖を前に、地域外に野宿できる場所を探しに出ている人も少なくないようです。かくいうHさんも落ち着き先を模索しているわけです。

f:id:asitanorojo:20190128083713j:plain

 Hさんの観察眼と、いろんな事実関係を踏まえた考察はとても興味深く、私たちが毎日の活動で少しずつ気づいてきたことをそのまま裏付けるような考察を聞かせてもらいました。

さらなる金もうけ主義

 2019年2月オープン予定の「劇場」は、今日のマラソンに合わせて工事の鉄板を外したそうです。そうして現れた建物はどんな大したものかと覗いてみたら、何とも見すぼらしい建物だったと大阪城公園のKさん。これでクールジャパンを売りに攻めようというのだからお粗末です。

f:id:asitanorojo:20190128083749j:plain

 また、「劇場」の南側は新たにカイヅカイブキの一群が伐採されます。台風の倒木の処理も半ばで、あの台風でも倒れなかった木を倒木の危険性を理由に斬り倒そうというのです。また、切り倒したあとは市民の寄付金を元手にサトザクラを植えるとのこと。

f:id:asitanorojo:20190128083823j:plain

 要するに人を集めるのに都合のいいもののために今あるものを壊してしまおうというわけです。そもそもこの界隈は暖かい季節なら桜などなくてもシートを広げた家族づれがすし詰めになっているほどです。また、この伐採と植樹はパークセンターではなく、大阪市によるものであり、足並みそろえて推進されている様子がうかがえます。

f:id:asitanorojo:20190128083947j:plain

 来月の寄り合いではまた大阪城公園はどのような姿になっているでしょうか。遊具広場がまた閉鎖されて工事中だったことも気になりました。

f:id:asitanorojo:20190128084042j:plain

 

2019年1月17日(木)夜回り・天然記念物といわれるくらい人情のある活動をしていきたいものです

 こんばんは!よろず相談です。

 新年あけて初の夜回りです。今年もどうぞよろしくお願いします。

 12月29日に、よろず相談では、忘年会を兼ねて年越しそばをしました。

 今回は、知り合いからお借りしたプロジェクターとついたて型のスクリーンを使って、野外上映会をしました。演目はKさんがおもしろかった!と太鼓判を押した『シマロン』。1960年代のアメリカ映画で、アメリカ開拓史劇。寒い中でしたが、温かいそばを食べながら、話をしたり映画を観たり、酒を酌み交わしたりして楽しく過ごしました。

 今度は『風と共に去りぬ』が観たいなあ、とAさん。この映画が大好きで、5回も観たとか。昔の映画はいいですね~。さつこんの映画は、暴力やエロが多すぎて、老若男女みんなで観て楽しめるものを選ぶのが大変です。昔の映画は、刺激的な映像や内容ではなく、構成や脚本でしっかり楽しませてくれるものが多いです。安心してみんなで鑑賞できます。

 楽しかったので、ちょっと飲みすぎて酔っぱらいました!!!ね!!

 

 1月5日には、西成区民センターで「日本一人情のある街「西成」がなくなる?」という集会がありました。今話題の『月夜釜合戦』釜ヶ崎を舞台にしたドタバタ喜劇で、よろずの関係者もあちこちに出演していたりします。ポルトガルポルト・ポスト・ドック国際映画祭でグランプリを獲得したばかりで、うれいしいことに誰でも一緒に観れる無料の上映会でした。またこの日は森信雄さんという棋士の人との対談や、カレーの炊き出しもあり、たくさんの人が集いました。森信雄さんは長年釜ヶ崎のセンターで労働者に将棋を教えてきた方です。将棋の世界から見える時代の変化は、街が変わるのと同様に、きれいで強力だが人間臭さがなく面白味がない……。

 人情という形のないもの、物差しで測れないもの、値段を付けられないもの、けれどもそれに触れるとホッとするし、救われる。しかし人情とは、きらびやかでもなければおしゃれでもなかったり。清潔でもなく公平でもなかったり。人と人との生の関係から現在進行形で生み出されるものなのでしょう。そう思えば、いまや天然記念物と言われるくらい、よろず相談は人情のある活動をしていきたいものです。