大阪城公園よろず相談

大阪城公園を中心に野宿者支援活動を続けている大阪城公園よろず相談のブログです。

2018年6月7日(木)夜回り・野宿生活のあとで

 10年ほども昔のことになりましょうか。その人は現在私たちが夜回りをしている公園の一つのテント小屋で野宿生活をしておられました。体調を崩されたことを機に、よろずもお手伝いをして、生活保護を受けてアパート暮らしをはじめました。よろずのメンバーの一部と家が近いこともあって、たまにおたくを訪問したり訪問されたりのおつきあいをしています。

 昨年末のこと、用事もあって訪ねてこられたのですが、言葉が不自由になっていて驚きました。何があったのかを聞こうにもうまく言葉がまとまらず、発語そのものも難しいようでした。心配なので数日後に訪問したところ、とりあえず日常生活は送れているようでしたし、ご本人も通院の付き添いなどは遠慮するので、その場はお別れしました。年が明け、どうやら大きな病院で検査を受けたり、電話をかけてこられたりと、少し回復しているように見受けられました。

 ところが、先月末に訪ねてこられた姿はひと目見てびっくりするほど痩せこけており、ただごとではない様子でした。すぐに担当のケースワーカーに電話し、一緒に区役所まで相談に行く約束をしましたが、いち早くケースワーカーの方が動いてくれた結果、緊急入院となりました。集中治療室での数日を経て、先日ようやく一般病棟での面会ができるようになりました。退院できるようになったとしても、いよいよ介護保険制度を利用した生活補助が必要だということでした。

 入院して弱っているし、相変わらず意思疎通に難はあるものの、意思表示すべき場面でははっきりした態度を取られるのが印象的でした。野宿生活は過酷なもので、しっかりした人でないと務まりません。苦労の多い人生を歩み、長年の野宿生活を生き抜いた人に備わった強さを垣間見たような気持ちになりました。

 

2018年6月3日(日)寄り合い──有料児童遊戯施設オープン

 暑くもなく寒くもない、いい一日でした。緑のおかずが不足しがちである普段の反省から、今回の持ち寄りごはんは野菜が少し多めになりました。おかずの種類も多彩で、スパムとウィンナーの炒め物、卵焼きは子どもたちにも好評でした。きゅうりの浅漬けもおいしくいただきました。

f:id:asitanorojo:20180604135153j:image

 今回は近々開催されるライブイベントをお手伝いする打ち合わせをしました。これも楽しそうな催しなので、よい天気になることを祈ります。また、この夏に車を借りてみんなで旅行に行こうかという計画が突如持ち上がり、にわかにリアリティを帯び、あれよあれよという間に日程と宿泊先まで決まってしまいました。よろずのキャラバンはどこへ向かうのでしょう。

f:id:asitanorojo:20180604135223j:image

 生活保護を受けるようになってからも、付き合いの続けられる仲間のいる人と、遠ざかって引きこもってしまう人がいます。自室の中で一人思いつめていないで寄り合いにでも来てくれればと思うのですが、なかなか誘いにものってくれません。物理的な距離も問題の一つです。

f:id:asitanorojo:20180604135303j:image

 森之宮駅側の公園入口の広場には有料遊戯施設がオープンしていました。木製の砦や小さな丘などが作られていて、楽しそうな空間に親子連れがにぎわっていました。しかし、正直にいって「有料でこれか」という拍子抜けする感がありました。もっと魅力的な無料のアスレチックを設けた公園もあるのに、これだけの面積をとってお金を取るほどの価値があるとは思えませんでした。

f:id:asitanorojo:20180604135449j:image

 屋内施設もくっついていて、遊具で遊んだり、別料金でワークショップに参加したりできるようですが、それだけなら公園内に設置する意味はありません。それこそ森ノ宮のキューズモールのように自前で土地を確保して好きに営業すればいいと思います。それ自体ではさして魅力的とも思えない施設の側としては、公園をアクセサリーにできて満足でしょうが、公園には何のプラスもありません。せめて野外アスレチックを無料開放でもしたらどうでしょうか(それでも元からある隣の遊具の方が子どもたちには喜ばれそう)。

f:id:asitanorojo:20180604135501j:image

 天王寺公園にあるものと同じ系列の施設のようです。大阪市の市長と職員はこんなものを大阪中の公園に作る手伝いをするつもりでしょうか。

2018年5月19日(土)第7回「センターの日」── よりあって生きていくためには

 毎回最初のコーヒーをお出しするのに時間がかかるので、あらかじめ10杯分のドリップコーヒーを保温ポットに用意してスタートしました。だいぶ暑くなって来たので今回は水出しのアイスコーヒーも用意しました。

f:id:asitanorojo:20180604125106j:image

 ここ数回、釜ヶ崎や大阪の今昔がわかる写真集からセレクトした写真をセンターの壁に貼り付けています。今回は『図解絵本 工事現場』という子ども向けの絵本から、全国各地の建設工事の現場を図解したイラストを用意しました。

f:id:asitanorojo:20180604125123j:image

 ギターとアンプを用意した弾き語りも定番化しています。目が不自由だという杖をついたおじいさんが演奏に足を止め、パイプ椅子に腰を下ろして聴いていかれました。演奏へのカンパといって500円いただきました。「センターの日」の取り組みについて「いいことだ!」とコメントもいただきました。

f:id:asitanorojo:20180604125237j:image

 自転車で立ちよったボランティアで空き缶拾いをやっているという男性は、ビラを余分に受け取り、「知り合いに教えてやろうと思う」と笑顔で去っていきました。

f:id:asitanorojo:20180604125309j:image

 病院から失踪してしまった知り合いを探しにセンターに来ているという方にもお会いしました。失踪した知り合いとセンターで再会できた例もあるそうです。生活保護を受けてアパート暮らしをしている人が入院した場合、長期化すると家賃(住宅扶助)が打ち切られ、アパートを解約されてしまうそうです(入院期間6ヶ月を目処に医師の診察結果から判断)。生活保護制度のおかしさ、困っている人が集える場所を守ることの意義を強く訴えておられました。またセンターの知らなかった顔を知ることができたように感じました。

f:id:asitanorojo:20180604125332j:image

 16時近くなると人があふれかえって、さながらセンターのゴールデンタイムのようです。センターでは、シェルターの整理券の配布や炊き出しなど、いろんな人がいろんなことをしているし、みんながいろんな用事でやってきます。何か特定の役割が与えられた施設ではなく、みんなでよりあって生きていくためにはこんな場所が必要なのだと思います。

カンパのお願い

 大阪城公園よろず相談の活動に賛同いただける方はカンパにご協力いただけると幸いです。以下の口座まで振り込みをお願いします。活動に関心のある方は一声おかけ下さい。夜回りや寄り合いのほか、哲学読書会やソフトボール大会、「センターの日」などの活動も行っています。

郵便振替

記号14080
番号32204771
大阪城公園よろず相談

郵貯以外からの振り込みの場合
店名 四〇八(ヨンゼロハチ)
店番 408
預金種目 普通預金
口座番号 3220477

2018年5月24日(木)夜回り・大阪城潜行10年!

 こんばんわ。よろず相談です。

 先日、「チベット潜行十年」という本を読みました。とある日本人が戦中から戦後にかけての12年、モンゴルからチベットーインドにかけてアジア大陸を放浪した壮大な記録です。

 1943年、著者は日本大使館の職員として中国の運輸ルートを調査するため、モンゴル人のラマ(僧)に化けて旅立ちます。1年で帰る約束だったのですが、新疆ウイグルへの憧憬をおさえきれません。ウイグルに向かう手前で遊牧民マフィアに軟禁され、観音経というありがたいお経を十万回詠んでくれたら解放してやると言われます。本当は僧ではないので一夜漬けでマスター。10万回唱えるとなると、毎日唱えても6か月かかると試算し、気が遠くなる著者。それでも断れず唱え続けるうちに月日がたち、いよいよ、といったところで日本の敗戦を知ります。

 著者はショックを受け、ウイグル行きを取り止めてインドに行くのですが、もはや帰ることもできず、そのままモンゴル人ラマとして10年に及んでインドーチベット間を放浪することになります。

 ラクダやラバ、または歩いて高原を超え、砂漠を超え、河を渡り、ヒマラヤ山脈を超え、気が遠くなるような旅なのですが、人の行き交うルートにはいかなる過酷な自然環境の場所でも村があり、人の暮らしがあります。

 さて、何千年もの間、人が行き交い、物が運ばれ、仏教が伝えられたこの壮大な一本道のことを考たとき、一体この日本の大阪に暮らすわれわれの自転車で毎日行ったり来たりというものに、どれ程の意味があるのでしょうか。それとも、どれ程の小さな距離であれ、人が行き交うということは、そこには点と点を結び相互に変化を促すなにかが(人や物、文化、習俗、言葉、はたまた遺伝子)運ばれているということと考えてもいいのでしょうか?

 まいどまいど大阪城公園を潜行しておりますよろず相談です。大陸を渡るキャラバン隊のように、同じ道でも何千年もたどれば道ができ、伝播(広がり伝わること)がおきるのでしょうか?なにか(とりあえずビラとかおにぎりとか)を運び、出会って影響されてまた運び・・・そのようにして道はつづくのかもしれませんね。今日出会って、少しばかりあいさつなどをしたことで、肉眼ではとらえきれないような変化が山脈の向こうで起きているかもしれません。

 まずは「どーも」と、軽い気持ちで毎度の夜回りをお迎えください。

2018年5月10日(木)夜回り・小さくとも生き抜く力

 三月一日のビラを最後に、わが家のネズミ対策について書いていませんでした。前回書いたのは実は二月頭の出来事です。この時には実はネズミ駆除業者に来てもらう話が進行しており、追加のエピソードを語りにくい状況にありました。職務怠慢甚だしいマンションの管理会社にとぼけたふりして探りを入れ、かつしつこくプレッシャーをかけて、対応に着手させたものの、家主負担で済ませられるのか、こちらに作業費を請求してくるのか不透明で、ネズミ本体のほかにも先の見えない面倒くさい事情がありました。

 ともあれ、これはもう素人がどんなにがんばっても無理だと判断せざるをえない出来事が起こったのです。ネズミといえども生き物なのだから、食べ物が得られなければいずれ餓死するはずです。インターネットで調べた範囲では、ネズミは1日に体重の3~4倍の食べ物を食べなければいけないという情報もありました。前回書いたように食料という食料は密閉容器か戸棚の中にしまい、家の中の扉やふすまの類は可能な限り閉じておくようにしました。外出時や睡眠時にもしっかり閉じるようにしました。

 すると、夜中に寝室の横のリビングのダイニングキッチンとの境界辺りの角の上の方からカリカリしつこく音がします。ネズミが「いる」ことの証にうんざりしながらも、もはや根比べであり、時間の問題であると考えて我慢します。一応どこから聞こえるのか確かめようとはしたのですが、よくわかりませんでした。天井裏にいるのかもしれません(常にこのような推量を迫られるのも負担です)。

 翌朝、朝の準備をしている時に何気なく引き戸の端を見ると、木くずが大量に落ちていました。なんと、ネズミは閉じられた部屋の境界を越えようと、柱と木戸をかじって血路を開こうとしていたのです。食べ物に手が届かないようにし、移動を制限するという作戦は的を射ていたといえましょう。しかし、道を塞がれればそこに穴を穿ってでも現状を打開しようというたくましさをネズミは発揮していました。敵ながらあっぱれといったところです。この作戦の方向性はまちがっていないものの、これを続けると被害が食べ物だけでは済まなくなるということがわかり、DIYによる戦いの継続を断念した次第です(つづく)。

 

2018年5月17日(木)第16回哲学読書会──『自由の哲学』3

 いつもお借りしている場所が使えなかったので居酒屋で行いました。

 シュタイナーの『自由の哲学』の第1章から第3章までを振り返りました。シュタイナーの後半生は神秘主義者としてのもので、『自由の哲学』で書かれているようなこととはガラッと内容が異なってきます。にもかかわらず、あるいは、その分、『自由の哲学』の明晰さ、論理性が際立ってきます。

 ところが、あらためて読んでみると、ところどころ神秘主義を感じさせるようなフレーズが紛れ込んでいます。「われわれの内で自然そのものが生きている(内なる自然)」、「『自我』ではない『自我』以上の何か」といった表現がところどころに見られ、超感覚的なものを意識した思考を行おうとしていることがうかがえます。

 二元論が主体と客体を分断し、「われわれと世界の間に壁をつくる」ものであるのに対し、シュタイナーは認識している自分自身、人間自身も自然の一部であり、宇宙内の存在であるという前提に立とうとしているように思えます。一元論、二元論といった対立自体が錯覚であり、別の角度からそうした錯覚を乗り越えようとしているかに感じられます。その仕掛けとして重要なのが「思考」であり、「思考」に導き出されるように現れる「意識」の位置付けであるようです。

 最近ウィリアム・ジェイムズの『プラグマティズム』を読んだKさんは、こうした認識の仕方の議論に興味を覚えるといっています。Kさんが別の人とやっている読書会で読んでいるバートランド・ラッセルの認識論にも同じような面白さを感じるようです。

 『自由の哲学』はあと2回かけて読み直す予定ですが、次に読みたいものも見えてきそうです。

第7回「センターの日」のお知らせ

 第7回「センターの日」を5月19日(土)14:00〜17:00に行います。

 飛び入りでのご参加お待ちしています。

 これまでの報告はこちらから(第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回)。

f:id:asitanorojo:20180517022606j:plain