社会運動において抗議行動を行う際、多くの人がその場に滞在して共同生活を営まねばならないことがあります。社会的な正義を志向している人たちのことですから、お互いに配慮した水平的な運用が工夫されます。
このような場において試みられることは、その場限りのことであったとしても、あるべき社会を自分たちで実現するという意味で「予示的政治」と呼ばれているようです。もともとは抗議行動に付随するものだった予示的政治の部分を居場所づくりとして活動の中心にすえる取り組みも世界中で広がっています。
ポイントとなるのは営利企業や消費文化とは切り離されたものを作り出すところにあります。誰かに雇われるのではなく、自分たちで自分たちの仕事を作って維持していく労働者協同組合という取り組みや、シェアハウスをシェアスペースとして運用して市場では得られない価値を作り出すといったことが考えられます。
よろずでやっている夜回りや寄り合いも、排除に対する抗議行動をしたり相談ごとにのる部分と、公共空間の中でごく当たり前の人づきあいを取り戻そうという部分とがあります。
路上とは排除がもっとも激しく現れる場所ですが、排除から逃れ逃れてたどりつく場所でもあります。ここでこそ、一人一人の尊厳が大切にされなければならないし、取り戻さなければなりません。試されているのはこの社会そのものなのです。
