釜ヶ崎のセンターで野宿する仲間に対して起こされていた立ち退き訴訟は、仮執行がつかないまま最高裁に上告されていましたが、最高裁はこれを棄却しました。いよいよ強制立ち退きが行なわれてもおかしくない状況になりました。
これまで数々の強制立ち退きが行なわれてきました。かつてはただ立ち退きを求めるだけでしたが、ある時期から生活保護を受けることを提案されるようになりました。しかし、生活保護を受けたい人ばかりではありません。すでに生活保護を受けたことがあり、その時の経験から気乗りしないという人もいます。
生活保護を受けるか立ち退くか。あるのは結局それだけです。実は単純な選択肢として「代わりの野宿場所を用意する」ことが考えられてもいいはずなのです。野宿が楽な暮らしではないことは分かっているが、野宿せざるをえない。しかし、一方で、そこで野宿を続けられると困るという事情も分かります。それなら、代替地を用意するのがとりあえず両者が折り合える解決策なのは明らかです。
しかし、これを認められない人たちがたくさんいます。なぜなのでしょう? 私たちはこれ社会に問わねばなりません。これはただ野宿者だけの問題ではないからです。ここにいわゆる市民社会の機能不全を解き明かすカギがあります。