大阪城公園よろず相談

大阪城公園を中心に野宿者支援活動を続けている大阪城公園よろず相談のブログです。

2019年9月21日(土)第23回「センターの日」──反対の声を骨抜きにする力

 9月の「センターの日」は、台風発生中の晴れ間のなかで開催しました。午前中はくもっていたけど、ビラまきするころには晴れているということがよくあります。

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散髪

 ビラ撒きにいく前に、「散髪やってもらえるんかな?」と声をかけてきてくれたかたがおられました。二時くらいに来てくれたらできるというと、一番に予約しといて欲しいとお願いされました。三ヶ月連続でやっているので、しばらくはセンターの周りのみなさんの髪はある程度刈りつくしてしまったのではないかなどと思っていましたが、途切れることなくバリカンを使っていました。

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 ハサミを使った散髪ができるメンバーが通院の都合で遅い時間にしか来れないので、ご不便をおかけします。失敗覚悟(失敗したら坊主)で構わないというかたは、ご協力お願いいたします。

懐メロのプレイリスト

 「センターの日」がはじまることを告知する意味も込めて、持ち運び式のスピーカーで1970年代の歌謡曲のプレイリストを再生しました。

 団結小屋のとなりの図書室におられたかたにビラを渡すと、「この歌の曲名わかるかな?」と訊かれました。プレイリストを確かめに行くと、小坂恭子の「想い出まくら」という歌でした。曲名を教えると、「ええ歌やな」「こういう思いわしもしたからよくわかる」と話してくれました。音によって同じ場所にいるという感覚が抱かれたり、歌は人の記憶を刺激してコミュニケーションを媒介してくれるのだなと思いました。

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路上からの視点

 ビラを配りながら「昼回り」をしていて、9月初め頃に夜中にここを通らなかったかと訊かれました。

「一寝入りして目が覚めちゃって起きてたら、こんな時間に通るはずないなあと思ったけど」

「寝てるだろうし、声かけるわけにもいがないだろうと思ったんですけど。みんな夜ぐっすり寝れないですよね」

「いや、たまたま一寝入りして目が覚めてたんですよ」

「声でわかりました?」

「いや、ここから見えますよ」

 二週間近く前のことを覚えていて話してくださったことをうれしく感じました。また、同じ路のうえで生きている感覚を少しだけ共有させてもらった気持ちになりました。

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 別のかたからは「あそこの端におった人いなくなったね」と話しかけられました。「気がついたらいなかったんですか?」と訊くと、「いや、荷物まとめとったよ」といいます。

 ここに寝ていると、車を後ろ向きに停める手配の車があって、そうなると排気ガスがすごくてたまらないという話も聞きました。やめて欲しいけど、まったく気にせずにやってくるとお怒りで、ひとしきり愚痴に耳をかたむけました。

映画は『網走番外地

 1970年代歌謡曲のプレイリストで歌を口ずさんでいる人もいるので、しばらく音楽にしていましたが、「映画やるの?」と、聞いてくる人もいたので、ぼちぼち映画もスタートしました。『網走番外地』の白黒画面が映ると、「懐かしいねぇ!」と白髪頭のがっしりしたおじさんが顔をほころばせて笑っていました。毎回どの映画にしようかと迷いますが、いい映画は心に訴えるものがあるといつも思います。

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ここは第二のふるさと

 大国町にあるという教会のかたが来られて、ふだん教会にきてくれているという人と話していました。10年前、63歳までは釜ヶ崎で働いていて、現金にバリバリ行っていたそうです。「酒をやめたくて教会に入信した」、そして実際にお酒をやめたのこと。

「ここ(釜ヶ崎)は故郷みたいなもんや。第二の故郷やな。こんなええところはないで」

「ここに来たらいつも誰かいますもんね」

「そうや! 横並びの(仲間)意識があるからな。けど、ここも変わったな。だいぶ変わった」。

 それでも「故郷や」と繰り返しておられました。

今年最後のかき氷?

 六月、七月、八月とやってきたかき氷を九月もやりました。八月ほどではありませんでしたが、結構かき氷も人気でした。しかし、昼夜の寒暖の差は大きくなっています。いつも立ち寄ってくれる人が、こぎれいな長袖長ズボンで、ベストを羽織っていたので、「きれいな格好してますね」と言ってから、ああ、衣替えしたんだなと気付きました。「ああ、そうか、もう寒いから冬の格好になってるんですね」というと、「そうそう。もう夕方からあったかい格好にしとかんとあかん」体から熱が逃げないように早めに暖かくしておかないといけないということのようです。それでかき氷食べるのは変だなと思って、「かき氷で体冷やさないように気をつけて下さいね」と言って渡すと笑ってました。

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10月5日・6日の全国地域・寄せ場交流会

 九月の「センターの日」のビラでご案内した全国地域・寄せ場交流会が先日行われました。「釜ヶ崎のジェントリフィケーション──再開発と貧困層の追い出し」と題した分科会で報告し、意見交流の機会を持ちました。

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 大阪城公園よろず相談からは、ジェントリフィケーションのなかではジェントリフィケーションに反対する声を無効化(骨抜きに)してしまう力が働くのだという話をしました。行政主導でつくられたまちづくり検討会議(のちに、まちづくり会議)という仕組みが、会議に参加する人としない人の間に分断と対立をつくりだし、反対の声を排除したり、うまく取り込んでしまうのです。

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 このような力が、いつ、どこで、どのように働くのかがよくわからないところに、今起きているジェントリフィケーションという事態の難しさがあります。私たちは、まだまだジェントリフィケーションについてよくわかっていないことが多いにもかかわらず、この言葉が一人歩きして、うまく立ち向かえていません。

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 まちづくり会議のなかでは、当たり前にふまえられるべきことが、すっとばされて、そのことが反対の声の無効化につながっています。このことにまず気づく必要があるし、より多くの人に気づいてもらわねばなりません。

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