大阪城公園よろず相談

大阪城公園を中心に野宿者支援活動を続けている大阪城公園よろず相談のブログです。

解題「居場所と居場所をつなぐ」

居場所のあり方

 2016年─2017年の越冬に際して、私たちは「居場所と居場所をつなぐ」というフレーズを添えていました。いつからか、居場所の大切さ、居場所づくりの必要性が強調されるようになりました。それだけ居場所が奪われている、居場所をなくしていると思われていることの現れでしょう。しかし、居場所を作り、守っていくだけではやがてその居場所も壊されてしまうのではないかという不安を感じます。一つ一つの居場所を守ることや「みんなの居場所」を拠点として築くことの限界を感じています。たった一つの強固な居場所のあり方に執着するのではなく、居場所は複数あってもいいはずなのです。

 さまざまな人が集まり、さまざまな社会資源が集積した釜ヶ崎という場所の重要性は現在でも損なわれていないし、これからも大切にし、守っていくべき場所だと思います。しかし、この釜ヶ崎とて、野宿生活をする人たち全てにとって、余さずかけがえのない居場所であるわけではありません。釜ヶ崎の存在を知っていても距離を置きたいと感じる人もいます。さまざまな人がいて、社会のいろんな場所で生きていることを考えれば、居場所というのは強固なものがどこかに一つあればいいというものではありません。

居場所の多様性・複数性 

 ささやかでも自分の居場所となっている場所は、おそらく誰にでも少なからずあるのではないでしょうか。それは時には毎日の駅のホームで乗り継ぎの電車を待って過ごす一時的な滞留かもしれません。明確な目的もなく立ちよる商業施設も、用をたすためだけでなく、自分だけの時間を作るために必要な場所かもしれません。家路をたどる際に通過する公園も、ただの抜け道ではなく、その公園が誰にでも開かれた場所であり続けていることによるのです。ビッグイシュー販売員の方たちは、自分が路上の風景の一部になるまで、ねばり強く立ち続けることで、徐々に収益が得られるようになるそうです。ビッグイシュー販売員が毎日立つ路上は野宿者である自分(そしてお客さん)の居場所を作り出す営みのように思われます。

 一昨年からハピネスライフさんと交流を持ち、ついに野宿当事者からこうした場所が作られるようになったのだと驚くとともに、あちこちで居場所づくりを意識した取り組みが広がっていることに思い至りました。ここには同じ問題意識、同じ理念が宿っているように思われます。しかし、大阪城公園での自分たちの経験を振り返るだけでも、こうした取り組みは多くのエネルギーを必要とするわりに意外にもろく、難しい課題にぶつかりがちだということがわかります。

 現在は、一つの理念のもとに結集し、一ヶ所に力を集中させる戦いが難しく、またあまり力を持てない時代状況にあるように思われます。しかしながら、同時に、それぞれの足元をきちんと固めて、力をためていく必要も感じます。このような状況で何か大きな力を生み出そうとするなら、強固な居場所を一つ作るために多くの力を集中させるのではなく、「居場所と居場所をつなぐ」ことが決め手になるのではないかと思うようになりました。

居場所の戦略

 誰かの居場所を知り、交流することで、それまでの自分にとっての居場所も強固になるように思われます。別に居場所がある、他にも行くところがあるという安心感は生活に余裕をもたらし、日々の活力ともなるのではないでしょうか。一枚岩にはなれない、しかし、それぞれが安定し、かつ知り合っていることが支えとなり、大きな流れを作り出す仕掛けとなるのではないでしょうか。

 東屋の排除から私たちは考えはじめました。扉を開ける前からあきらめていないだろうか。扉を見つけたら開けてみる。穴があればのぞいてみる。それで何もなくても損はしません。一つ一つは小さな事実でも、かき集めれば見るべきものを教えてくれるかもしれません。小さなことでも共に取り組んでいける仲間が必要です。誰かが作っている居場所を訪ねて知り合うという、一つ一つは小さな取り組みが、ピンチの時に助けとなる知恵と力を育んでくれるように思います。