大阪城公園よろず相談

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2017年12月14日(木)第13回哲学読書会『悲劇の誕生』

 今年最後の読書会ということで、最初からお酒を飲みながら議論をしてしまいました。

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 今回の哲学読書会はニーチェの『悲劇の誕生』を読みました。前回までベルクソンの『笑い』で喜劇を中心とした論考を学んだので、かつて読んだニーチェを再読する意味でも、この本が選ばれました。

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 岩波文庫版のこの本は『ツァラトゥストラかく語りき』などの代表作を書いた後のニーチェが自作を批判的に論評した序文が付いています。翻訳も読みやすく、『ツァラトゥストラ』に見られたニーチェ独特の詩的な表現も楽しめます。ところが、『悲劇の誕生』本文は結構難解で、「最後まで読み通せなかった」というメンバーも少なくありませんでした。訳者解説によれば、この本は論理の展開に難があり、論壇デビュー作にして酷評されたのだそうです。

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 確かに、「アポロ的」と「ディオニュソス的」という対比が悲劇とどう関わっているのか今ひとつわかりませんでした。『ツァラトゥストラ』を読んでもわかることですが、基本的な構図として、ニーチェは理性的な論理の世界を批判し、踊りや歌などの肉体を重視します。ニーチェの思想の根本は最初から現れていたとわかるところは興味深く読めました。「ソクラテス主義」という言葉で、論理の世界の始まりをソクラテスに置いて批判している点も、これまでギリシャ哲学にも触れながら学んできた知識と照らし合わると面白く議論できました。

 ベルクソン『笑い』、ニーチェ『悲劇の誕生』と続けて読んできて、西洋社会の基本的な教養がなければこれらの議論を十分に理解するのは難しいと感じました。そういう意味で基本的には「西洋社会の人たちのための哲学」という側面があり、自分たちが読む時には多少距離のあるものと思った方が受け止めやすいように思いました。そして、東洋哲学も西洋哲学に劣らないものとして、素朴に読んでみたい気持ちになりました。ニーチェニーチェで、東洋哲学や仏教哲学に影響を受けているそうです。Kさんが友だちと読んでいる『十牛図』という禅にまつわる本も面白そうです。

 お酒を飲みながら話していたせいか、ニーチェが若者たちに支持され、ナチズムに利用された歴史、「生きづらさを感じたことがあるか」とか、教育にまつわる話題など、おしゃべりか議論がわからない話で盛り上がり、どういう流れか、次に読むのはルドルフ・シュタイナーの『自由の哲学』になりました。