大阪城公園よろず相談

大阪城公園を中心に野宿者支援活動を続けている大阪城公園よろず相談のブログです。

「資源ごみ回収規制条例」分科会を終えて

 先日お知らせしたように、2017年9月16日(土)・17日(日)の両日開催された第34回全国地域・寄せ場交流会にて、大阪の3団体主催で資源ごみ回収規制条例に関する分科会を担当しました。分科会が全部で7つあり、また交流会全体の参加者数も限られるという中で、どのくらい参加者があるか不安がありましたが、横浜、京都などからもご参加いただき、いろいろ具体的なお話を聞くことができました。

アルミ缶回収労働者の思い

 1日目は大阪城公園からも3人の当事者が参加してくれました。京都からも、アルミ缶回収規制条例が施行された時期を知っている当事者の方が参加して下さいました。地域間で当事者同士の経験談を交換する機会ともなり、全国地域・寄せ場交流会ならではの良い場を持てたと嬉しく思います。

 京都ではアルミ缶規制条例の施行を理由とした生活保護の受給を認めるといった働きかけが行政からなされていたそうです。自分なりに区切りをつけてアパートに入った人の中には、「人生を中断させられた」という思いを捨てきれずに暮らしている人がいます。廃品回収で暮らしを成り立たせている野宿者は、「これで食べている」という気概があります。「資源ごみの日の朝となったら、気合いが入るからね」と分科会に参加した当事者同士でうなずきあう場面もありました。

「犯罪者」を作り出す仕組み

 資源ごみ回収規制のもっとも大きな問題は、それまでは何の問題もなかった行為を、条例一つで犯罪にし、「犯罪者」を作り出してしまうところにあります。

 市民の中には資源ごみ回収で暮らす野宿者に対して屈折する思いを抱いている人たちもいます。その人たち自身も決して楽な生活をしているわけではなく、自分が散々働いたうえで、ささやかな楽しみとして発泡酒を飲む。資源ごみとして出したその発泡酒の空き缶を持っていかれると、自分の我慢と努力の上前をはねられたような気持ちになるようなのです。

 資源ごみ回収規制条例が設けられる背景の一つとして、地域による資源ごみ回収の広がりと、回収業者による大規模で私的な回収行為の問題視があります。しかし、実際に条例が施行されてみると、トラックで回るそのような業者は取り締まられず、野宿者がスケープゴートのように吊し上げられることになります。資源ごみ回収規制条例は、市民が野宿者を攻撃するためのお墨付きと「武器」を与える結果となります。

手を結ぶ二つの「合理性」

 近年の大阪市政を見ていると、公共領域を営利企業が利用する便宜を図り、商業化する方針が強引に推し進められています。これと同時に住民自治の強化が謳われており、資源ごみ回収規制条例は住民自治活動との関わりを理由として制定されました。これは、本来行政が担うべき領域のうち、商売になる部分は営利企業に提供し、あまり利益の出ない部分は地域に押し付けるものです。そう考えれば、これらはプライバタイゼーションの裏表両面であり、一体の思想として機能していると考えられます。そして、この二つのプライバタイゼーションが、ジェントリフィケーションやクリミナイゼーション(貧困の犯罪化)と共振していくのです。

 グローバリゼーションが進展する中、これまで社会を支えていた規範が揺らいでいきます。グローバリゼーションとともに語られる「新自由主義」では、規制緩和の必要性が強調されます。規範が揺らぐ社会の中で、「何でも収益を上げる手段にしたい経済的な合理性」と、「何でも管理しておきたい官僚主義的な合理性」とが、数少ない確固たる判断基準であるかのように存在感を増していきます。そして、この両者が手を組んで公共領域を破壊し、市民を金儲けと管理の道具として支配しようとしている構図が見えてきます。

第三の「合理性」を探るヒント

 分科会の中で、「資源ごみ回収で生活する野宿者に、資源ごみ回収を公認する腕章を配れ」と行政に提案したという横浜市の経験を聞きました。そうすれば、地域による集団回収はともかく、行政回収の分については、回収コストも浮くし、当事者も犯罪者扱いされずに生計を立てられます。この提案は受け入れられなかったとのことですが、アイデアとして面白いし、ある種の合理性を持っているように思います。即物的な合理性にわれわれの生活圏や公共領域が侵犯されている現状に対して、誰も不幸にせず、つながりを作り出すもう一つの合理性を生み出す道を示唆していると言えないでしょうか。

 マクロな排除の構造を読み解き、また、排除に抗する共同性を生み出していくためには、個々の現場で直面している状況、経験した事例をつぶさに見ていくことが必要です。合理性のほころび、ロジックが破綻するポイントをこれらの事例は教えてくれます。無力さに飲まれず、現実を見つめることによって見えてくるものを私たちの力に変えていけば、いつか道を切り開くことができるはずです。

 それゆえ、このような交流の機会を大切にし、今後もこのような場を持っていければと思います。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

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