大阪城公園よろず相談

大阪城公園を中心に野宿者支援活動を続けている大阪城公園よろず相談のブログです。

2019年2月14日(木)夜回り・商業主義によるさらなる公園破壊

 前回の夜回りの際、有料児童遊戯施設の奥のカイヅカイブキの一群に伐採を予告する書面がくくりつけられているのを発見しました。森ノ宮側の噴水の周りにはカイヅカイブキが大量に植えられていて、公園に緑の色あいを添えていました。2016年頃、台風でこのカイヅカイブキの何本かが傾くといった出来事がありました。倒木の危険を理由に、この一帯に立ち入り禁止のロープが張り巡らされ、何の対策がとられることもなく、1年以上放置され、下草も伸び放題になっていました。

 2017年末に突如、白い鉄板で覆われ、2018年頭に「便益施設」の建設が発表され、樹木を大量に伐採して、スタバを含む多くの商業施設が同年5月にオープンしました。倒木云々は口実にすぎず、また金もうけ施設建設までの待機状態として、意味もなく封鎖されていたわけです。

 2018年3月には大規模な劇場を作るためといって、公園東側の樹木が一面まるまる伐り倒されました。今回の伐採はこの劇場の南側で、カイヅカイブキを伐採後は市民の寄付金でサトザクラを植えるそうです。大阪城公園内には現在も昨年9月の台風による倒木が山積みになっています。その台風でも倒れなかったカイヅカイブキを「倒木のおそれがある」ので伐り倒し、市民の寄付金で桜、つまり人集めと金もうけに役立つ木を植えるというのです。

 ちなみにこの伐採と植樹は大阪城パークセンターではなく大阪市建設局と大阪城公園事務所の名義で告知されていました。いつもながらのしらじらしいつじつま合わせでも、市民の大勢には十分と高をくくっているのでしょう。

大阪城公園では、指定管理者制度を導入してから、木を/208本伐採して駐車場を造り/405本伐採してジョー・テラス・オオサカを造り/175本伐採してカフェ等を造り/338本伐採してクールジャパンパーク大阪(吉本劇場)を造り/せせらぎを潰しました。」(あおむらさきさんのツイートより https://twitter.com/aomurasaki_ll/status/1088773682850234369?s=21
 

第16回「センターの日」のお知らせ

今何ができるのか

 

 センター閉鎖を前にして、さまざまな動きがあるようですが、もう一つ決め手を欠いています。月に一度の「センターの日」も選択を迫られているように感じられます。

 しかし、「センターの日」が見てきたのは、今日、明日と続いていく労働者の生活でした。センターが閉鎖されようとされまいと向き合わなければならない毎日があります。

 「センターの日」をきっかけとして、労働者と同じようにこの街で起きていることと向き合い、考えたいと思います。

 焙煎コーヒーとならんで、労働者には古本が人気です。不要な本があればジャンルを問わずお持ちください。

場所・日時のご案内

 JR新今宮駅西口から地上に出て、国道の向かいのあいりん総合センター正面付近で、2019年2月16日(土)13時から16時に実施します(毎月第三土曜日)。ブルーシートとこたつ、コーヒーの焙煎の匂いを目印にお越し下さい。

これまでの「センターの日」

 これまでの報告はこちらです (第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 第15回)。

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2019年1月19日(土)第15回「センターの日」── 「まちづくり」の錯覚

第15回「センターの日」のあらまし

「センターの日」の基本スタイル?

 13時から準備をはじめ、14時からの映画上映までにビラを配布することで「センターの日」がすごくうまく回る手応えがありました。ようやく「センターの日」の平常のスタイルができあがったように思えます。

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 他にも、ヘンゼルとグレーテルが森に小石をまいて目印にしたように、柱柱に点々と「センターの日」のビラを貼ることで、こたつの場所までうまく目を引けるという発見もありました(立ち止まって見入っている姿があるのは同じ柱だったので、センターの中でも目に留まりやすく、足を止めやすい位置の柱があるのかもしれません)。

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 最初はスピーカーの音量がうるさすぎるだろうかと気になったものの、スクリーンの周りに人の列がぐるっとできると映画鑑賞を共有体験する空間がその音量の範囲で包み込むようにできあがっていました。調理台代わりのキャンプテーブルをいつも通り南側に向け、その右手の柱の陰にスクリーンを設置して映すと、コーヒーと映画がうまく混じり合って居心地のいい空間が生まれていました。

コーヒー

 コーヒーは、焙煎を10回したので60杯くらい入れた計算になるとのこと。前回、前々回と同じくらいです。現場で焙煎をして、3時間の枠内で入れられるのはこれが限界のようです。

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 「お茶はないか。緑茶」という人や「白湯が欲しい」という人もいました。焙煎コーヒーは「センターの日」の目玉でも、焙煎コーヒーを入れる待ち時間が辛いし、コーヒーでなくていいという人もいるなら、映画やおしゃべりのお供として別の簡易飲料を用意してもいいかもしれません。

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 紙コップがもったいないので、最近はプラスチックやホーローのカップを洗って返してくれるようにお願いしています。一緒に豆を挽いてくれた人も何人かおられました。共同炊事的な参加の糸口となっているように感じました。

古本コーナー

 いつも来てくれる人はもちろん、多くの人が立ち寄る人気コーナーになっています。メンバーが声かけをしてくれて来てくださった方や、知り合いからの寄付によって新しい本も追加できました。

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 常連のかたから「すごく助かってます」と言われました。1日に2冊のペースで読むとのこと。新今宮文庫の本はもう読み飽きてしまったそうです。古本コーナーに人気が集まるというのは、釜ヶ崎でくらす労働者の生活の一端をよく表していると思います。

ビラによるアピール

 より多くの人に読んでもらうことに注力して、いつもの緑のビラには踏み込んだことを書きました。もちろん、ビラにどれくらいのリアクションが得られるか、みなさんの胸に響くかはすぐにはわからないものの、古本放出を通してわかった釜ヶ崎の労働者の知識欲の強さ、活字を読み込むどん欲さを見込んで、お話をする切り口にと思い切りました。

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この1ヶ月の動向から

仮移転の前倒し

 昨年末、西成労働福祉センターとあいりん職安の仮移転日が3月11日に決まったという情報が入ってきました。1月15日発行の西成労働福祉センターの「センターだより」では正式なアナウンスが掲載されていました。このことを「センターの日」で話すと、ある人は「やっぱりそっちにはそういう情報が行ってるんやな!」と驚いていました。

 3月11日にセンター3階にあるふたつの行政機関が移転するということは、この日にセンターが閉鎖されるのではと懸念されたものの、3月末まで1階はこれまで通りの相対求人の場として利用することがわかりました。もしかすると3階は閉鎖されてしまうかもしれないと考え、「センターの日」で何かデモンストレーションができないかと話し合いました。

 たとえば、閉鎖1ヶ月前になる2月10日に「座り込み」ならぬ「寝込み」をやってみるかとか、18時にシャッターが下りるタイミングで何かアピールをするとか、アイデアを練ったものの、ほどなく3階も3月末までは閉鎖されないことがわかり、この計画は見送りになりました。

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二つの取り組み

 センター閉鎖を前にして、いくつかの団体が行動を起こしています。昨年から何度かセンターで集会を開いている「センターの未来を提案する行動委員会」は、センター閉鎖後の代替地の交渉を行政相手に進めているようです。毎日座り込みをしている稲垣さんの釜合労、釜ヶ崎公民権運動の人たちは、仮移転工事の不透明な部分を追求したり、センター閉鎖そのものに反対しています。

 この二つの取り組みは、西成特区構想によって提起された「あいりん地域まちづくり(検討)会議」に対するスタンスが異なります。前者はまちづくりの議論に前向きに参加し、未来の釜ヶ崎、未来のセンターを労働者のために実現しようという未来志向です。後者はまちづくりの議論の進め方そのものに懐疑的で、実際に生じている現在の排除を問題視して抗議行動に力を入れています。

 両者の考え、両者の取り組みは、どちらかがまちがっているものではないし、どちらも必要なものだと思います。たとえば、代替地の交渉とセンター閉鎖反対、どちらも同時に要求して構わないはずです。労働者の今の暮らし、労働者の今後の暮らし、これらは切り分けることのできない問題です。

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「まちづくり」の錯覚

 分断をもたらしているのはやはり「まちづくり」なのです。労働者の目に触れないところでセンターの建て替え案として勝手なイメージ図が描かれています。仮移転先のセンターでは相対紹介に代わる新システム導入がだいぶ前に決まっているにもかかわらず、労働者向けの説明会も開かれていません。

 「まちづくり」すなわち、同じ地域の住民が協力して問題を解決し、未来像を話し合うことを悪いという人はいません。しかし、住民参加は手段に過ぎません。にもかかわらず、「まちづくり」という言葉は一人歩きして、明るい未来が約束されているような錯覚を生み出します。

 これは、前回書いた「新しい公共性」と似ています。行政が担うのは公共性の高い領域であり、「行政=公共」と思われていました。しかし、行政機関特有の弊害もあります。その解決手段として企業や住民組織に行政が管理していた領域を部分的に委託するようになり、その管理のあり方が「新しい公共(性)」と呼ばれました。しかし、何が公共性であるかは、管理のあり方以前に議論しなければならないことで、公共性そのものに古いも新しいものありません。

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労働者がまちをつくってきた

 「不法占拠と都市のコモンズ」という視点について前回書きました。釜ヶ崎自体が都市のコモンズであり、「不法占拠」から発しながら、労働者が奪われた生活の権利を取り戻す場所となっていきました。「不法占拠」とは「都市のコモンズ」であり、最初から奪われている者が権利を取り戻すための「生きながらの階級闘争」なのです。

 すなわち、労働者は釜ヶ崎のまちを作ってきた主体であり、鈴木組闘争 、夏祭り、越冬闘争といったさまざまな闘争は労働者による「まちづくり」だったと言ってよいでしょう。このまちで働き、飯を食い、酒を飲んで休んではまた働く。労働者が生きる闘いこそが、このまちを作ってきたはずです。

 「まちづくり」の会議の中で、「再チャレンジできるまち」「セーフティネットの集積地」などと「まちづくり計画」に盛り込まれようとしていることは、労働者による「まちづくり」があって初めて出てきたことなのに、当の労働者の参加が顧みられないのはおかしなことです。

 「このまちでまちづくりをどうこう言うなら、まずここに来い」と言ってやりましょう。会議など、センターで公開でやればいいのではないでしょうか。労働者の目の前で言えるような議論をしなければなりません。

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カンパのお願い

 大阪城公園よろず相談の活動に賛同いただける方はカンパにご協力いただけると幸いです。以下の口座まで振り込みをお願いします。活動に関心のある方は一声おかけ下さい。夜回りや寄り合いのほか、哲学読書会やソフトボール大会、「センターの日」などの活動も行っています。

郵便振替

記号14080
番号32204771
大阪城公園よろず相談

郵貯以外からの振り込みの場合
店名 四〇八(ヨンゼロハチ)
店番 408
預金種目 普通預金
口座番号 3220477

2019年1月27日(日)寄り合い──3年ぶりの再開の裏で進む事態

ラソンで隔絶された森の中で

 全国的な冷え込みが予測され、近畿地方でも雪が降る可能性が高いという話でしたが、明るい日差しの下でゆったりとした雰囲気で寄り合いがの場を持てました。

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 昨年と同様、1月の寄り合いは大阪女子国際マラソンの日に当たりました。大阪城公園内もマラソンコースになっており、寄り合いをしている市民の森の横の園路を報道の車両やランナーが走り抜けて行きました。

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 交通規制がなされた森ノ宮駅前は多くの人の姿がありましたが、人の行き来ができないせいで大阪城公園内に入ると逆に外界から隔絶されたようでした。

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 夜回りの際の打ち合わせでは普通の持ち寄りという話だったのですが、よろずメンバーのHさんとKさんから希望があり、これもまた昨年と同じくおでんになりました。

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 揚羽屋からお惣菜をいくつも差し入れをいただき、美味しくいただきました。どれも好評でした。

3年ぶりの再会

 今回は久しぶりに再会できたHさんが来てくれました。もともとは東屋で寝ていた人で、東屋が閉鎖されたあとは釜ヶ崎はもちろん、扇町天王寺公園など、あちこちで野宿していたそうです。

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 天王寺公園といえば、2016年に夜間閉鎖による追い出しがありました。Hさんはまさに追い出しされた公園入り口で野宿していて、テレビのニュースで顔と実名をでかでかと流されてしまったそうです。当時のニュースのテレビ画面のキャプチャー画像を保存していたので本人に見せると、やはり彼でした。

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 私たちは気づきませんでしたが、「センターの日」をやっているところを見かけていたことも明らかになりました。2019年3月末のあいりん総合センター閉鎖を前に、地域外に野宿できる場所を探しに出ている人も少なくないようです。かくいうHさんも落ち着き先を模索しているわけです。

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 Hさんの観察眼と、いろんな事実関係を踏まえた考察はとても興味深く、私たちが毎日の活動で少しずつ気づいてきたことをそのまま裏付けるような考察を聞かせてもらいました。

さらなる金もうけ主義

 2019年2月オープン予定の「劇場」は、今日のマラソンに合わせて工事の鉄板を外したそうです。そうして現れた建物はどんな大したものかと覗いてみたら、何とも見すぼらしい建物だったと大阪城公園のKさん。これでクールジャパンを売りに攻めようというのだからお粗末です。

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 また、「劇場」の南側は新たにカイヅカイブキの一群が伐採されます。台風の倒木の処理も半ばで、あの台風でも倒れなかった木を倒木の危険性を理由に斬り倒そうというのです。また、切り倒したあとは市民の寄付金を元手にサトザクラを植えるとのこと。

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 要するに人を集めるのに都合のいいもののために今あるものを壊してしまおうというわけです。そもそもこの界隈は暖かい季節なら桜などなくてもシートを広げた家族づれがすし詰めになっているほどです。また、この伐採と植樹はパークセンターではなく、大阪市によるものであり、足並みそろえて推進されている様子がうかがえます。

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 来月の寄り合いではまた大阪城公園はどのような姿になっているでしょうか。遊具広場がまた閉鎖されて工事中だったことも気になりました。

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2019年1月17日(木)夜回り・天然記念物といわれるくらい人情のある活動をしていきたいものです

 こんばんは!よろず相談です。

 新年あけて初の夜回りです。今年もどうぞよろしくお願いします。

 12月29日に、よろず相談では、忘年会を兼ねて年越しそばをしました。

 今回は、知り合いからお借りしたプロジェクターとついたて型のスクリーンを使って、野外上映会をしました。演目はKさんがおもしろかった!と太鼓判を押した『シマロン』。1960年代のアメリカ映画で、アメリカ開拓史劇。寒い中でしたが、温かいそばを食べながら、話をしたり映画を観たり、酒を酌み交わしたりして楽しく過ごしました。

 今度は『風と共に去りぬ』が観たいなあ、とAさん。この映画が大好きで、5回も観たとか。昔の映画はいいですね~。さつこんの映画は、暴力やエロが多すぎて、老若男女みんなで観て楽しめるものを選ぶのが大変です。昔の映画は、刺激的な映像や内容ではなく、構成や脚本でしっかり楽しませてくれるものが多いです。安心してみんなで鑑賞できます。

 楽しかったので、ちょっと飲みすぎて酔っぱらいました!!!ね!!

 

 1月5日には、西成区民センターで「日本一人情のある街「西成」がなくなる?」という集会がありました。今話題の『月夜釜合戦』釜ヶ崎を舞台にしたドタバタ喜劇で、よろずの関係者もあちこちに出演していたりします。ポルトガルポルト・ポスト・ドック国際映画祭でグランプリを獲得したばかりで、うれいしいことに誰でも一緒に観れる無料の上映会でした。またこの日は森信雄さんという棋士の人との対談や、カレーの炊き出しもあり、たくさんの人が集いました。森信雄さんは長年釜ヶ崎のセンターで労働者に将棋を教えてきた方です。将棋の世界から見える時代の変化は、街が変わるのと同様に、きれいで強力だが人間臭さがなく面白味がない……。

 人情という形のないもの、物差しで測れないもの、値段を付けられないもの、けれどもそれに触れるとホッとするし、救われる。しかし人情とは、きらびやかでもなければおしゃれでもなかったり。清潔でもなく公平でもなかったり。人と人との生の関係から現在進行形で生み出されるものなのでしょう。そう思えば、いまや天然記念物と言われるくらい、よろず相談は人情のある活動をしていきたいものです。

第15回「センターの日」のお知らせ

「センターの日」はセンターで過ごそう!

 闘うことと生きることと地続きだ!

 ──ただし、この闘いに参加するためにはセンターに行かねばなりません。

 釜ヶ崎で生きること自体がもともと階級闘争を生きることだったのだとすれば、その階級闘争が今度はジェントリフィケーションという姿で現れたというだけの話です。

 「センターの日」はセンターで過ごしましょう。

 不要になった古本があればお持ちいただけると助かります。おいしいコーヒーが付いてきます。

場所・日時のご案内

 JR新今宮駅西口から地上に出て、国道の向かいのあいりん総合センター正面付近で、2019年1月19日(土)13時から16時に実施します(毎月第三土曜日)。ブルーシートとこたつ、コーヒーの焙煎の匂いを目印にお越し下さい。

これまでの「センターの日」

 これまでの報告はこちらです (第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回)。

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2018年12月15日(土)第14回「センターの日」──不法占拠と都市のコモンズ

第14回のあらまし

 2018年最後の「センターの日」では、映画上映と横断幕作成を試みました。

映画上映『太陽の墓場』

 映画上映は、バッテリーで2時間使えるプロジェクターに携帯式スクリーン、これもまたバッテリー電源で使えるスピーカーを用意して行いました。上映したのは第一次暴動の前年に釜ヶ崎を舞台に制作された『太陽の墓場』でした。

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 腰を落ち着けて映画を観ていく方もおられたものの、入れ替わり立ち替わりでした。寒さのせいか、1階に人が少なかったこと、16時近くなるとシェルターや炊き出しに並ぶために離れざるを得ないことが影響していたと思われます。

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 また暗くなるのが早いのも気になりました。そこで「センターの日」の開始時間を次回から冬の間は13時~16時に変更することにしました。

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 2019年1月の「センターの日」は新世界を舞台とした1996年の映画『ビリケン』が候補に挙がっています。

横断幕作成「青い鳥がここにいる どこに行ったらええねん」

 「センターの日」のメッセージを考えてみようと横断幕作成を決めました。初めての試みであり、何を書くか悩んでいる時間が長かったものの、とりあえず完成させることができました。実際に文字を書きはじめると立ち止まって眺める人もおられました。

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 また、何を書くか検討している時に、コーヒーに並んでいる人たちにメモ帳片手に意見を求めたりもしました。思わぬところに食いついたり、異論があったり、交流のメディアとして楽しめました。

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 第15回では横断幕を展示するので、ぜひお立ち寄りください。

コーヒーと古本

 温かいコーヒーはふだんと変わらずに楽しんでいただけたようです。センターに布教活動で来ている女性が常連になっていて、「ここのコーヒー美味しいわ! 喫茶店より美味しいな!」とみんなに勧めてくださり、笑いを誘っていました。

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 古本コーナーはあいかわらず人気で、開始直後に毎回来てくださる方もいます。ふと立ち寄って「もらってええの?」とごっそり持っていく人もいました。

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 追加した分と合わせて3箱あったものが終わる頃には2箱にまとまりました。釜ヶ崎の労働者の知識欲の強さがよくわかります。

「センターの日」のめざすもの

 映画上映、横断幕作成、古本コーナーなど、コーヒーを飲みながら、その場にいるだけで楽しめるような時間をセンターに作り出せないかといろいろ試しています。

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 というのも、労働者にとってセンターとはもともとそういう場所だと思うからです。

新しい公共性とコモンズ論

 ひと昔前の「新しい公共性」の議論の登場にともなって、担い手問題の解決策としてコモンズ(共有地)が注目されるようになりました。一方、ジェントリフィケーションを「都市のコモンズ」を拠点として形成する階級闘争として位置付ける議論があります。

 コモンズとは、里山や放牧地など、共有されながらも誰の所有にも属さない土地のことを指します。また、資源に余裕があり、そこから得られる利益を分かち合う余裕のあるところに成立する仕組み(ルール)を含むこともあります。

 「新しい公共性」という言葉とともに注目されたコモンズの議論は、市民参加を取り入れる際の公有地の管理(ルール)の問題にすり替えられ、人びとに共有されるコモンズがどのような場所であるのかが見落とされてしまいました。

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 コモンズとは本来「ゆるい共有地」、つまりほどほどに放置されながら共有されていた場所に時間をかけて形成されていった仕組みだったのだと思います。言ってみれば、コモンズとはそもそも不法も合法もないような放置された状態の利用から始まるものです。

 野宿生活をする仲間がいる場所は、都市の隙間的な空間であり、河川敷や橋の下のような、これといった使い道の定まっていない空間です。そこを誰かが私用していたとしても、管理の手間に見合うメリットがないために放置されます。ゆえに、持たざる者が「そこそこ放置された空間」を利用する(住み着く)ことで、ようやく人間らしい暮らしを取り戻していく拠点となります。それは時に「不法占拠」と呼ばれます。

 「不法占拠」とは「都市のコモンズ」であり、最初から奪われている者が権利を取り戻すための「生きながらの階級闘争」ととらえることができます。

都市のコモンズにおける「センター」

 そういう意味では釜ヶ崎自体が都市のコモンズであり、「不法占拠」から発しながら、労働者が奪われた生活の権利を取り戻す場所となっていったのだと考えられます。このような「階級闘争」を通して、夜間シェルターや禁酒の館は、合法的な居場所として獲得されたといっても過言ではありません。

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 しかし、一つ二つ合法的な居場所を確保したところで、圧倒的な剥奪状況は解消されていません。釜ヶ崎の労働者には未だ都市のコモンズを形成して階級闘争を行う権利があります。都市のコモンズ=「不法占拠」を展開するうえで、センターは占拠のあり方として独特な位置にあるように思われます。

 「最初から奪われた者たち」の権利回復は、都市空間に滲み出し、コモンズを構築することで交渉の掛け金を作るところにあります。路上にあっても野宿の仲間は生きるために働いているのはもちろんです。センターにおいては「労働者でありながら野宿せざるをえない」というように、センターにあってはそこにいることが労働者としての権利を主張することと重なってきます。

ジェントリフィケーションと都市のコモンズ

 ジェントリフィケーションとは、貧者の追い出しをともなう地域の再開発のことを言います。再開発にかかわる人びとは「貧者にこの場所を奪われてきた」という報復感情を抱いています。

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 釜ヶ崎は、日本の高度成長期を支えるために政策的に作り変えられた街であり、その頃には日本全国から労働者が集められました。しかし、集まった労働者はただ都合よく使われるのではなく、ここに都市のコモンズを作りだしたのです。

 そうしてできた街から、同じ労働者を今度は追い出そうとしている人たちがいます。釜ヶ崎で生きること自体がもともと階級闘争を生きることだったのだとすれば、その階級闘争が今度はジェントリフィケーションという姿で現れてきたというだけの話です。

「センターの日」はセンターに

 現センターが閉鎖されたとしても、労働者はどこかに身を置かねばならず、「放置された場所」を見つけて潜り込むはずです。そこがどこになるのかはまだわからないにしても、必ず「そこ」を見出します。

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 仮移転先のセンター、本移転予定のセンターがどのようなものになったとしても、労働者の置かれた窮状は変わらないし、この闘いは生きることと地続きです。状況がどのように変わろうと、「その場にいるだけで自分たちのものであるような空間を作り出す」ものとして「センターの日」を続けることが、労働者によりそう形を作り出す可能性を私たちは見据えています。

 釜ヶ崎の外で野宿者支援に取り組んでいた私たちが「釜ヶ崎回帰」して始めた「センターの日」は、野宿者運動の中で学んだことを寄せ場に返すものでなければいけません。「不法占拠と都市のコモンズ」という視点を、その一つとして提案したいと思います。

カンパのお願い

 大阪城公園よろず相談の活動に賛同いただける方はカンパにご協力いただけると幸いです。以下の口座まで振り込みをお願いします。活動に関心のある方は一声おかけ下さい。夜回りや寄り合いのほか、哲学読書会やソフトボール大会、「センターの日」などの活動も行っています。

郵便振替

記号14080
番号32204771
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郵貯以外からの振り込みの場合
店名 四〇八(ヨンゼロハチ)
店番 408
預金種目 普通預金
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